発達栄養100 おいしいものでも食べない子ども

食欲の話をすると、「おいしくないから食べない」ということは多くても、「おいしいけど食べられない」というのは、あまり聞いたことがないかもしれません。しかし、発達障害がある子どもの場合には、案外と目にすることが多く、その対処が求められることも少なくありません。

子どもにとって、おいしいという感覚は、甘みが中心になっています。甘いものはエネルギー源である糖質が多く含まれているものの味で、成長のためには糖質が必要であることから甘いものに対して敏感に反応します。

味覚を感じる味蕾は、乳児期に最も多く、1万個もあるとされています。成長につれて減っていって、成人になると7500個ほどにもなります。味蕾は減っていくものの、味覚は子どもの場合には成長につれて鋭くなっていき、味覚のピークは3〜4歳です。
「味覚は3歳までに作られる」と、よく言われますが、実際には4歳までということです。

発達障害であることが確認される最も多いのは3歳児健診のときです。味覚の発達と、発達障害が確認される時期が重なっていることもあって、発達障害児の感覚の中でも保護者を惑わせるのが味覚の違いです。

おいしいものは甘いものということは間違いがないことですが、その味覚は成長につれて、さまざまなものを食べるようになって酸味や苦味のあるものも食べられるようになっていきます。もともと酸味は臭ったものの味、苦みは毒があるものの味であるので、これを避けるのは本能のようなものです。

この本能が過敏に反応することによって、甘いものしか食べられないという子どもも出てくるようになります。では、甘いものであれば、おいしいと感じてくれるのかというと、ただ甘いだけでは食べないということもあります。

甘いものを食べても、自分の知っている「おいしい○○」とは違う、という反応をすることがあります。おいしく感じたときの環境も大切で、楽しい気持ちで食べたときには、とてもおいしく感じたのに、食べているときの環境や一緒に食べている人の違いが、同じ味であっても、おいしく感じないこともあります。

おいしさは味だけで決まるものではありません。色、食感、温度、食器、環境、照明も、すべて味覚に影響を与えます。子どもの好き嫌いの感覚には楽しく、集中して食べられることも大切で、特に発達障害がある子どもは特徴的な反応を見せることがあるのです。