発達栄養108 セロトニン不足による消化・吸収の低下

健康を維持するためにも、身体的な不調などを改善するためにも、栄養が基本になるということには議論はないところです。そして、健康で発育することは、学習や運動などの子どもの全体的な機能を高めるためにも重要なことで、このことにも栄養摂取が重要になってきます。

発達障害がある子どもは、自律神経の調整が乱れがちで、その原因として神経伝達物質のセロトニンが不足していることが指摘されています。脳内には1000億個以上の神経細胞があり、一つの神経細胞から次の神経細胞に情報を伝えていくために働くのが神経伝達物質です。

セロトニンは神経を安定させる物質として知られていて、セロトニンが働くことによって興奮作用や機能向上作用があるドーパミンやアドレナリンの働き過ぎを抑える役割があります。発達障害ではセロトニンの不足から、セロトニンの刺激を受ける受容体が働きにくく、抑制作用が低下します。これには遺伝子が関係しています。

ドーパミンやアドレナリンの受容体が働きにくくなる場合もありますが、興奮や機能向上の作用は生命維持には重要なことであるため、この働きが弱いことは少なくなっています。ドーパミンやアドレナリンが多く分泌されすぎる場合もあるものの、それよりもセロトニンが少ないことのほうが多くなっています。

自動車に例えると、アクセルの働きは他と変わらなくても、ブレーキの働きがよくないためにスピードが出過ぎて、ハンドル操作がコントロールできない状態と似ています。

ドーパミンやアドレナリンは自律神経の交感神経の働きを盛んにして、セロトニンは副交感神経の働きを盛んにします。栄養摂取でいうと、消化・吸収を進めるのは副交感神経で、交感神経の働きが盛んになっているときには消化も吸収も能力が低下します。

発達障害の改善に必要な栄養素があっても、そのための吸収が低下しているのでは、通常の栄養摂取の考えでは通じにくくなります。そのことが発達栄養の実践を難しくさせる要因となっています。