脂質は一般には脂肪と表現されていますが、脂質は水に溶けずに有機溶媒に溶ける性質がある物質を指しています。脂質のエネルギー量は1gあたり約9kcalとなっています。重要なエネルギー源になると同時に、ホルモンや脂肪膜などを構成したり、熱伝導性が低いことから体温を保持する働きや、皮下脂肪として臓器を保護する働きもあります。また、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)を吸収する作用もあります。
脂質の種類は化学構造によって、単純脂質(中性脂肪)、複合脂質(リン脂質、糖脂質、リポたんぱく質)、誘導脂質(ステロール類)に分類されます。ステロール類のほとんどはコレステロールです。リン脂質とコレステロールは、そのままの形で小腸から吸収されるのに対して、中性脂肪は分解されてから吸収されます。
中性脂肪は1分子のグリセロールが3分子の脂肪酸を結びつけた構造をしています。中性脂肪という言葉から、「酸性、中性、アルカリ性」という水溶液の性質と勘違いされることもありますが、英語名のトリグリセロール(Triglyceride)の訳で、トリ(tri)はラテン語語で3に由来します。中性脂肪は貯蔵型の脂肪で、一般に脂肪と呼ばれるときには中性脂肪を指しています。
脂肪酸は構造的な特徴から飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。飽和脂肪酸は鎖状につながった炭素にすべて水素が結合した構造をしています。不飽和脂肪酸は炭素と水素が結びつかずに炭素同士が二重結合している部分がある構造となっています。二重結合が1個のものは一価不飽和脂肪酸、2個以上のものは多価不飽和脂肪酸と呼ばれます。
多価不飽和脂肪酸のうち炭素鎖の二重結合の位置によってn‐3系脂肪酸、n‐6系脂肪酸などに分類されます。3番目に最初の二重結合があるものがn‐3系脂肪酸、6番目にあるものがn‐6系脂肪酸となります。この構造によって、脂肪酸の性質が異なります。
脂肪酸は炭素と水素が鎖状につながった片端にカルボキシル基(‐COOH)が結合した構造をしています。