発達栄養29 代謝促進で活性酸素の発生を抑制

ミトコンドリアの中のTCA回路の中でブドウ糖や脂肪酸を効率よく代謝させていくには、ビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂が必要になりますが、それと同時に重要になるのは代謝促進成分のα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10の量です。これらの代謝促進成分は20歳代前半をピークに年齢とともに体内生産量が減少していくため、加齢によって活性酸素が増えていくことになります。
それならば20歳までの成長期の子どもの場合は必要がないような話に感じるかもしれませんが、α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は体内で合成されるために必要な材料があります。それが不足していると充分に合成されず、子どもでも代謝の低下が起こるようになります。
代謝促進成分は、どれもミトコンドリア内でATPの産生に関わっている物質で、ブドウ糖と脂肪酸はミトコンドリア内でATP生産に必要なアセチルCoAに変換されてからTCA回路に運ばれています。α‐リポ酸はブドウ糖をアセチルCoAに変換するために働くと同時に、TCA回路の回転を盛んにする働きがあります。
L‐カルニチンは脂肪酸と結びついてミトコンドリアの膜を通過させてアセチルCoAに変換させています。コエンザイムQ10はATP産生の最終工程の電子伝達系で補酵素として働いています。
このATP産生の反応で、コエンザイムQ10とα‐リポ酸は還元型の抗酸化物質に変換され、ATP産生の際に発生する活性酸素の除去物質(活性酸素を水に変える物質)としても働いています。
活性酸素を消去する成分としては、植物の色素などの抗酸化物質が知られています。ミトコンドリアで発生した活性酸素には種類があり、それぞれの抗酸化物質は消去を担うものが決まっているため、複数の抗酸化成分を摂る必要があります。ところが、代謝促進成分は体内で作られ、エネルギー産生のために働くだけでなく、活性酸素をミトコンドリア内で消去して外に漏れ出さないように働く物質でもあるため、ミトコンドリアを良質な状態で維持するために必要不可欠な物質となっています。