神経伝達に必要なミネラルというとカルシウムがあげられます。カルシウムが不足するとイライラするのは、神経伝達がスムーズにいかなくなるためだという説明もわかりやすいことです。カルシウムと並ぶか、それ以上に必要とされるミネラルとして鉄があげられます。
鉄というと赤血球の構成成分で、鉄が酸素を結びつける働きをするので、鉄分不足は貧血につながるという認識はあっても、神経伝達というイメージはないかもしれません。
神経伝達物質のセロトニン(5–ヒドロキシトリブタミン)は精神を安定させる作用があり、必須アミノ酸のトリプトファンを材料に、前駆体の5–ヒドロキシトリプロファンを経て合成されています。そのトリプトファンから5–ヒドロキシトリプロファンを合成するときに必要な酵素を働かせるための補酵素の役割をしているのが鉄です。
セロトニンと比較されるドーパミンは報酬系と呼ばれる積極性を高める神経伝達物質で、セロトニンが増えるとドーパミンの働きが抑えられる、ドーパミンが増えるとセロトニンの働きが抑えられるという関係性となっています。ドーパミンは必須アミノ酸のフェニルアラニンから非必須アミノ酸のチロシンを経て合成されています。フェニルアラニンからチロシンが合成されるときにも、チロシンからドーパミンが合成されるときにも鉄が酵素を働かせる補酵素となっています。
ドーパミンからはノルアドレナリンが合成され、ノルアドレナリンからはアドレナリンが合成されます。ノルアドレナリンもアドレナリンも自律神経の交感神経に作用する神経伝達物質となっています。
発達障害はセロトニンが不足していることが指摘されています。自閉症スペクトラム障害ではドーパミンとアドレナリンに変化が少ないことから興奮しやすくなり、注意欠陥・多動性障害ではドーパミンとアドレナリンが増えて、さらに興奮しやすくなります。
学習障害では自律神経の調整への影響が大きくて、副交感神経の働きが高まらず、交感神経の働きが高まって興奮しやすく、集中しにくいということがみられます。