自閉症スペクトラム障害に特徴的にみられる感覚過敏のうち、食事に直接的に影響するのは味覚過敏です。酸味、苦味、渋味、辛味、塩味に過敏に反応して食べられないということで、料理をする家族にも大きな負担がかかります。このうち食べなくても健康に影響がないものは避けて、食べなければ健康が維持できないものは、なんとかして食べられるようにしようと考えるのが一般的です。
酸味がある食品の代表的なものは柑橘類(レモン、オレンジなど)、イチゴで、特に豊富な栄養素はビタミンCです。ビタミンCは淡色野菜、緑黄色野菜に豊富に含まれています。ビタミンCは緑茶にも含まれていますが、苦味があって、これが苦手だという子どもも少なくありません。
苦味はレバーの特徴的な味覚で、味覚過敏でなくても苦手な子どもが多くいます。レバーにはビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂がすべて含まれていて、レバーさえ食べていればミトコンドリアのTCA回路を正常に働かせてエネルギー代謝を促進する4種類のビタミンB群を補うことができます。しかし、レバーは大人でも苦手な人は多く、味覚が育っても克服が難しい食品の一つです。
ビタミンB群は水溶性ビタミンのために毎日、摂る必要があります。ビタミンB₁は豚肉や大豆に、ビタミンB₂は魚や乳製品、卵、大豆に、ビタミンB₆は魚や肉、卵に、ビタミンB₁₂は魚や肉に多く含まれています。これらの食品を摂って、補給する必要があります。
苦味がある食品にはミネラルが多く含まれ、ミネラルが多く食品には渋味もあります。渋味の正体はタンニンやカテキンなどのポリフェノールです。タンニンもカテキンも緑茶に多く含まれている抗酸化成分です。苦味が苦手な子どもは、一般には子どもが大好きだとされているチョコレートも苦手です。
辛味成分は唐辛子のカプサイシン、しょうがのジンゲロール、山椒のサンショオールなどで、食欲を増進させたり、発汗や清涼感などの作用もあります。しかし、辛味がある食品を食べなくても生きていくことができます。塩味は塩分(ナトリウム)の特徴で、加工食品や調味料に塩分が多くなっています。減塩が叫ばれる時代には、塩味の過敏は、あまり影響がないと考えられます。