感覚過敏のうち食べることに直接的に関わってくるのは味覚過敏ですが、味覚以外にも食べられるものを制限するような感覚過敏が確認されています。
温かいものは温かく、冷たいものは冷たくして提供するのが、おいしい料理の基本です。温かさの基準となるのは60℃です。温かい温度は80℃、60〜80℃がぬるいというのは通常の感覚です。
この温度なら熱いと感じないように思われがちですが、感覚過敏には60℃以下で、冷めていると感じるような温度であっても火傷しそうなほどに熱く感じる場合があります。これとは逆に、冷たいものが痛みを引き起こして飲めないという感覚過敏もあります。
冷蔵庫の温度は5℃が中心温度で、10℃以下に保たれるように設定されています。冷蔵庫から出して、おいしく感じるサラダの温度は10℃以下とされていますが、これでも痛みを感じるのが感覚過敏の特徴です。感覚過敏では氷が歯に当たっただけで強烈な痛みにも感じます。
温度はおいしさを左右する重要な要素で、温かなご飯は食べられても、冷めたご飯が食べられないという子どもは少なくありません。これは単に温度の違いだけではなく、米のでんぷんの性質も関係しています。米は炊飯や蒸煮などによって加水加熱するとアミロース(多数の糖分がつながった高分子)の結合が崩れ、でんぷんが糊化します。
この状態をα(アルファ)化といいます。α化した米のでんぷんは熱が冷めていくとβ(ベータ)化して老化した状態になります。粘性が失われ、消化がよくない状態になります。
粘度が高いコシヒカリ系のコメはβ化するとおいしさが失われるのに対して、粘度が低いササニシキ系はβ化してもおいしさが残るという特徴があります。米を変えることで、冷めたご飯は食べられないということがなくなり、その成功体験が冷めた料理でも食べられるようになる、ということもあります。家で飲食している米と銘柄が違うと食べられないという子どももいますが、これも炊飯米の性質が関係しています。
餅はα化したあとにβ化しにくくなっていますが、ネバネバとした食感があり、喉に詰まりやすくなっています。餅は飲み込み能力が高い若い世代が喉に詰まることは少ないものの、喉に詰まることがあると思っただけで食べられない子どももいます。