発達障害の感覚過敏の一つの触覚過敏では、「茹で野菜でも固くて痛みを感じるので食べられない」ということもあれば、「三つ葉の茎が喉に刺さる」と訴える子どももいます。どうして、こんなもので痛みを感じるのかという疑問も抱かれるところですが、周囲の人には理解できない刺激に苦しんでいるのが発達障害児の特徴といえます。
固いものを噛むことは歯にも歯茎にも強めの刺激がありますが、この刺激を痛みと感じると、その痛みを避けるために固いものが食べられなくなります。実際に固いのかどうかは関係がなくて、本人が固いと感じているものは固い存在なのです。
野菜の食物繊維が刺さるという感覚がある場合には、細かく刻むことや、食物繊維の中でも刺激が弱い軟らかな野菜や水溶性食物繊維が多く含まれるものに変えることで対応できます。しかし、これは家庭での食事の場合で、給食や外食では食材の調理法まで完全に選ぶのは難しいことです。
感覚過敏の触覚過敏の中には、食器や箸、スプーン、フォークなどが変わると、口の中の感覚が変わって食べられなくなるということがあります。食器やグラス、口元に食べ物を運ぶ箸などが味の感じ方にも影響するのは知られていることですが、それでも普通は少し味わいが変わるだけで、食べられないということはありません。
しかし、触覚過敏の場合には、いつもと違う食器では食欲が湧かない、茶碗の大きさや形が違うと手で持てない、金属の食器では食べられないということが起こります。こういったことは、味覚や嗅覚、視覚、聴覚、触覚という、これまで食事に影響を与えてきた五感に対応するだけでは解決しにくい困難さを生み出しています。
そのようなことまで気を使って、食べられるように導いてあげることが、子どもの生涯にわたる健康を作るために必要なことなのです。