発達障害は親の過保護のせいだと言われた時代がかつてあり、親との触れ合い不足や突き放し、虐待が原因だとされた時代もありました。今では、それは誤りだということが判明して、親のせいではない、持って生まれた特性だということがわかり、治らないとしても親子の交流によって改善することができるということもわかってきました。
発達障害そのものは親のせいではなくても、偏食は親のせいかもしれないという話を、母親を対象とした講習で話をさせてもらっています。偏食が特にみられるのは、自閉症スペクトラム障害の特性とされる感覚過敏のために、食事に関する五感(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚)が過敏になりすぎて、どうしても食べられないものが出てきてしまいます。
子どもの健全な成長には、絶対に必要な栄養素があります。それが不足すると身体の成長にも脳の成長にも大きな影響が出てきます。そのために子どもが強い拒否反応を示しても、無理にでも食べさせようとする親が少なからずいます。その気持ちは理解できないことではないのですが、好き嫌いの範疇を超えて、身体が受け付けないものを無理やりに食べさせようとする親に対して、優しい気持ちでの行為、子どもの健康を気づかっての行為と捉えられないとしても仕方がないことです。
食事の困難さを抱えている子どもは、食事に対しての情報には敏感で、思ったよりも情報を収集しています。それなのに親が身体のためだからと言って「一口だけでも食べて」と口元に食べ物を持っていくと、一口を食べただけで身体によい結果が出るのかという疑問も出てきます。小学生にもなると、今どきの子どもはサプリメントのことも知っています。必要な栄養素はサプリメントで摂ればよいのでは、という疑問を抱く子どももいるのです。そんな考えに対して、食事で栄養素を摂ることが必要だ、と言えるだけの知識を持っている親が、どれくらい存在しているのかという思いもあります。
この話は、日本メディカルダイエット支援機構が実施している「サプリメント情報知識検定」の講習を受講した、発達障害児の母親と話していて、感じたことです。
牛乳に抵抗を示す子どもに無理やりに飲まそうとするのは、子どもにとっては同じ白い色をしたバリウムを飲まそうとしているような感覚です。嫌いなものを口に押し込まれることは、トラウマ(心的外傷)にもなり、親が嫌いになり、ますます親の思いから離れてしまうことにもなりかねないのです。