私たちの脳には、耳に入ってきた音を聞き分ける機能が備わっています。喫茶店で目の前に親しい人がいて飲み物を飲んでいるときには、目の前の人に集中していると、周期の音は聞こえていても脳では余計な音を遮断したり、注目(傾聴)しないように制限を加えて、目の前の人の話すことを聞き逃さないようにします。喫茶店でテレビがついていても、それは聞こえていても何が放送されているのかわからないというのが普通のことです。普通のことが普通でないようにキャッチするのが発達障害の特性の一つで、聴覚過敏となると、聞こえなくてよいはずの音まで脳に届けられて、しっかりと反応をすることになります。
喫茶店に一人でいるときに、目を開けていたときには気にならなかったとことが、目を閉じると視覚が遮断されたことで聴覚が鋭くなって、他の席の人の会話、コーヒーカップの音、新聞をめくる音、外のクルマの音などなど、どんどんと飛び込んできます。これと同じことが目を開けていても、目の前に親しい人がいて話をしているときでも、耳という集音器に入った音をすべて脳が聞いて反応してしまうのが聴覚過敏です。
喫茶店でよくあるのは、会話をしている目の前の人よりも、座席の後ろ側にいる人のほうが距離は近くても、その話し声も聞こえにくく、話している内容も声が大きめであったとしても聞こえてこないものです。ところが、聴覚過敏では聞こえなくてよい音が聞こえてしまい、これが気になってくると、聞きたくない異常な音のようになって、さらに神経を逆なでするようになります。実際の音量よりも大きく聞こえたようになり、嫌な音に対する反応も強くなります。
今回は発達障害の聴覚過敏について触れましたが、他にも味覚過敏、嗅覚過敏、視覚過敏、触覚過敏もあって、脳が上手に調整してくれるという社会生活を送るのに必要とされる遮断が行われずに、ずっと苦しい思いをしている子どもが多く、それが大人になっても続いているために、すぐにも走って逃げたい状況にいる人たちの存在を広く知ってほしいのです。そして、本人を尊重して上手に付き合っていく方法を模索してほしいのです。