発達障害の注意欠如・多動性障害の子どもの特異な行動をプラスに捉えるための言い換えについて紹介しましたが、自閉症スペクトラム障害の子どもについても同じような理解が必要です。自閉症スペクトラム障害の子どもは言い換えというよりも、対応する側の考え方によってマイナスと思われるようなことをプラスに転換することができます。
自閉症スペクトラム障害は、閉じこもり、ひきこもりのような印象が抱かれがちですが、スペクトラムという言葉が使われるように、連続体を指しています。ここからが自閉症で、そこまでは自閉症ではないという考え方ではなく、境界線がはっきりしない状態であることが確かめられています。
自閉症スペクトラム障害の特徴に「興味の範囲が狭い」ということがあります。興味の範囲を広げられないというのは弱点のように思われるものの、付き合う側からすると何に興味があるのか、関心があるのかわかりやすくて、それに反応すればよいということがあげられます。何度も同じことを言うのは聞いているほうとしてはイライラさせられるかもしれませんが、言いたいことがわかりやすいので、やはり反応すべきことがわかります。
遠回しの表現が通じないという特性もあるのですが、それなら遠回しはやめにして、具体的に何をすればよいのかという指示をすれば通じるということです。イマジネーション(想像力、空想力)が弱いということが指摘されますが、何をしてほしいかを伝える側が具体的、直接的に表現することで理解をしてもらうことができます。
こだわりが強くて、何をするにしても“しつこい”と思われることが目立っていますが、これは見方を変えると、忘れずによく覚えているということで、忘れっぽい子どもに比べたら、とてもよい特性ということになります。しつこい性質は、特定のことには力を発揮するものの、新しいことや変化には弱いということがあるのですが、同じことを飽きずに続けられることは誉めるに値することです。
こういったことも子どもの特性を活かせる環境があってからで、こういった環境づくりは大人になっても治るものではないという発達障害の特徴を理解しているなら、職場でも特性を活かせる働き場所を作る工夫も必要だということを認識してほしいのです。