箸の持ち方は正しいのに、茶碗の持ち方が正しくないために箸を使って上手に食べられないという子どもも少なくありません。これは発達障害児に限ったことではないものの、箸と茶碗をうまく使って食べられないと、余計なストレスをかけて、子どもの発育にも影響を与えます。中でも発達障害がある子どもの場合には、これがプレッシャーを強めて、改善にマイナスになることにもなります。
茶碗は和食の作法というよりも、合理的な使い方ができる持ち方が実は美しい持ち方となっています。右利きの場合を例示すると、茶碗を右手で持ち上げ、左手の人差し指から小指を揃えて下から支えます。左手の親指を茶碗の縁に添えて持ち上げます。持ち上げ方は一つではなくて、手のひらの上に茶碗をのせて持つ、茶碗の側面を支えて持つ、人差し指を茶碗に引っかけて持つなどの方法があります。
茶碗の持ち方がうまくいかないのは茶碗の大きさとも関係しています。持ち方がよくないという子どもを食事時間に見せてもらうと茶碗が大きすぎる例が多くなっています。食器を持って食べるのは日本人の特徴的な習慣です。それ以外の国は、皿での食事だけでなく茶碗のような食器を用いていても食卓に置いたままで食べています。食べる量の違いで食器の大小の差はあっても、手に持って、つまり宙に浮かせたままで食べるのは日本人だけです。
そのために手の大きさに合った茶碗を選び、成長につれて徐々に大きくしていきます。成長や体格に合わせて大きくしていくということでは箸も同じことがいえます。
手に持って食べるというのは、ただ持ち上げて口に近づけて食べているだけではなくて、食器を傾かせたり、向きを変えています。食べるときに動かすのは箸だけでなくて茶碗も汁椀も動かしています。この食べ方をするために、茶碗からスプーンで食べるようなときでも食器を動かしています。
手に持った食器を食べやすいように動かすためには左手(右利きの場合)を自由に動かすための訓練が必要です。訓練といっても、茶碗に飴玉を入れて、その中でクルクルと回すだけのことですが、これが上手にできないと、年齢を重ねてからも茶碗を置いたまま箸で食べるというアジアの他の国の食べ方と同じことをするようにもなりかねません。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)