「目は口ほどに物を言う」は、目の変化には気持ちが現れやすく、目を見れば何を考えているかがわかるということを指しています。態度は目に現れるので、本人は意識をしていないようでも、本気で取り組んでいないと簡単に見抜かれてしまうということです。発達障害児は周囲の環境に馴染みにくさ、生きにくさを感じているので、周囲の人の態度には過敏に反応します。特に過敏に反応するのは目の表情の変化です。
微細表情という研究テーマがあって、海外の研究論文を見ると口元や鼻元の微小な変化から、本心を探ろうというものです。この微小表情を読み取るときに最も障害となっているのはマスクです。欧米人はマスクをつける習慣がないことが新型コロナウイルスの感染拡大の原因となったと報道されていましたが、単に習慣がないということではなくて拒否反応が強くありました。というのは、口と鼻が隠されていると考えていることが、まったく伺われなくなってしまうからで、このことを非常に不安に感じています。
どれくらい不安なのかというと、日本人がサングラスをして目の表情が見えない人に対して抱く、不安感、不安を通り越して恐怖感を感じるとの同じような感覚です。発達障害児に限らず、周囲にいる人が全員、サングラスをかけていたら、馴染みにくいところか、こんな人たちばかりでは暮らしていけない、すぐに逃げ出したいという気持ちになるのは当然のことです。
発達障害児は、他に注目が行ってしまうために、目の表情を見るのが苦手なところがあります。目で示す表情は、できるだけ大きく、そして大袈裟なほどに示す必要があります。発達障害児に対しては目を見ればわかるということではなく、はっきりと口に出して伝える、言葉だけでは伝わりにくいときには絵にして示す、見本を示すというように、より細かな、より親切な触れ合いをしなければならないのです。