発達障害児のための筋代謝力

発達障害児に対する運動指導は、発達を支援するために実施されています。運動というと筋肉強化と思われがちですが、それよりも筋肉と関節を動かし、それによる刺激によって機能を向上させることが重要です。それと同時に、筋肉と関節を動かすことによって脳と身体の活動のためのエネルギーを作り出すことも目的としています。
筋肉のための運動というと、筋力と持久力が一般にあげられます。筋力は筋肉のパワーのことで、強い力を出すことを指します。筋肉は2種類の筋繊維があり、一つは白筋、もう一つは赤筋です。白筋は無酸素運動で使用される筋肉で、ブドウ糖がエネルギー源となっています。赤筋は有酸素運動で使用される筋肉で、そのエネルギー源は脂肪酸です。最近、よく言われるようになったのが運動による筋代謝力で、エネルギー源を効果的に活用してエネルギーを作り出す能力を指しています。
筋肉を動かすことによって発生するエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)は、それぞれの細胞の中で作られたものは、その細胞の中でしか使うことができません。他の細胞に使われることはなくて、ましてや足の筋肉で作られたエネルギーが脳まで送り届けられることはありません。となると、筋肉運動をしたからといって脳に効果が出るようなことはないかと思われるかもしれないのですが、神経の働きは伝達物質によって伝えられていくものなので、こちらのほうは関係があります。
筋肉運動をすると、血流がよくなり、脳細胞にも血液が多く送られるようになります。脳細胞が使うことができるエネルギー源はブドウ糖だけですが、血流が盛んになることによってブドウ糖が多く取り込まれるようになり、これが脳の活性化に役立ちます。
筋代謝力を高めるためには歩く、走るといった有酸素運動が効果的で、これによって脂肪酸をエネルギーとする能力が高まれば、長く運動をすることができるようになります。長く運動できるということは、長く脳にブドウ糖を届けられることになるので、筋代謝力を高めるウォーキングを指導する“歩育”を実践しています。