発達障害児は、状態によって療育手帳を取得することができます。療育手帳が取得できると、状態に応じた福祉サービスが受けられ、それが発達障害児の改善のための支援につながることがわかっていても、取得しないことを選択する親も少なくありません。療育手帳を取得することは自分の子どもが障害であることを認めることになるから、ということを大きな理由としてあげる専門家がいます。
療育手帳は発達障害であることだけでは取得することはできません。他に障害がある子どもに交付されるもので、自治体の保健福祉センターなどを通じて児童相談所で、発達指数、知能指数が75以下であるのかを確認する検査を受けることが必須条件とされています。発達指数は子どもの発達の基準を数値化したものです。発達指数と知能指数の点数によって障害がランク化されていて、支援の内容が決まります。
療育手帳の取得によって受けられる福祉サービスは国による制度に基づくものと、自治体の制度に基づくものとがあります。国によるものは特別児童扶養手当で、精神障害、知的障害、身体障害がある満20歳未満の児童を養育している保護者に支給されます。重度障害者の場合については、障害児福祉手当と特別障害者手当が設けられています。税金面でも障害者控除、特別障害者控除の制度もあります。
自治体の制度では、重度障害者の在宅支援手当、先天性障害児の養育者手当などがあります。同じ国の基準であっても、自治体によって検査結果が異なっていて、「あの市は福祉サービスが充実していて、療育手帳が交付されやすい」ということが広がって、発達障害児の親が移住するという例も珍しくありません。療育手帳が取得できないと、普通の子どもと同じように扱われるということが当たり前に起こっているからです。
幼児教育・保育の無償化がスタートして、幼稚園、保育所、認定こども園は、所得制限はあるものの無料で利用できるようになりました。障害児が利用する施設も無償化しましたが、発達障害児の場合には発達障害だけでなく、療育手帳の取得が条件となっています。ここまでの福祉サービスがあるのに、これを利用したがらないのは親が悪いと言うのではなくて、発達障害であることを隠さなければならない社会的障害のほうを解決することを考えるべきだということを伝えさせてもらっています。