発達障害児は、発達障害ではない子ども比べると知能指数が低めであると考えられることが多いのですが、これには大きな疑問があります。知能指数を把握するための検査は、おおまかな知能の判断基準とされ、知的障害の診断や支援にも使われています。試験には複数の方式があり、方式によって30〜60分の検査時間が定められています。その時間に集中して試験問題を解くことができるのを前提としていて、発達障害児が、その時間、試験問題を解き続けることができるのかと言われると、大きな疑問も抱かれています。
検査内容には、言語能力が大きく関係するA式と、言語能力があまり関係しないB式があり、この二つをミックスさせたC式(AB混合式)に分類されています。A式検査は問題が文章で提示され、それが三段論法となっているので、深い考察が苦手な子どもにとっては低い結果が出やすくなっています。海外の出身で、日本語は話せるものの細かなニュアンスまではわからないという子どもでは本来の知能よりも低い結果となることが指摘されていますが、それと同じようなことが発達障害児にも言えるということです。
B式検査は図形や数字などを用いた理数的な問題が多く出され、これまで学習してきた文化的な特性が影響されない内容とされています。もともとは海外出身の人でも把握しやすくするために始まったものです。発達障害であっても問われている意味がわかりやすく、知能指数が把握しやすいと考えられているものの、発達障害の学習障害には算数機能に障害が認められるものもあります。学習障害は知的発達に遅れがないものとされていますが、算数機能の障害があると実際の知的発達を反映しない知能指数が現れてしまうことになります。
こういったことも、それぞれの状態に合った個別式検査が全員に対して実施されればよいのですが、学校で集団の筆記式検査で実施される集団式検査が多く、どうしても選抜試験としての結果が出やすくなります。学習障害の読字障害、書字障害の場合には、そもそも筆記試験が苦手であることが考慮されているのかとなると、これには疑問があります。個別式検査は1対1で対話しながらの検査で、正確な結果は出るものの手間がかかります。そこで学校では集団式検査で低い結果が出たときに実施されます。
個別式検査は対象年齢によって方法は異なるのですが、書面での検査ではなく、積み木、ミニチュア模型、カラーチップ、絵カード、文字カードなどを用いた、よりリアルな方法となっています。