発達障害児の食事には文化性が必要だ

発達障害の自閉症スペクトラム障害によくみられる感覚過敏の味覚過敏は、好き嫌いの嗜好とは根本的に違って、どうしても食べられない食材や料理があります。幼児のときには食べられなかった苦いもの、酸っぱいもの、辛いものが成長につれて食べられるようになるというのが通常の変化だとすると、味覚過敏では、それらの味が強すぎる刺激となって身体的に受け入れられない状態が続きます。
食物アレルギーの場合には、アレルギーを起こす食品を避けてメニューを作らなければならないことから、バラエティー豊かなメニューとはいかなくなります。しかし、同じ栄養素が含まれた食品を選ぶことによって、栄養学的なところでカバーすることが可能です。生活習慣病で禁止される食品がある場合でも、食品の組み合わせによってカバーされます。
これは変更できる食品が多くあって、味覚的には問題がないことが前提とされているからですが、発達障害は食材ではなく調理法のほうに強く影響されるので、もっと栄養摂取には問題がないと思われがちです。しかし、食べられない味がある、食べられない食感がある、食品の刺激が受け入れられないとなると、どうしても似たような料理になりがちです。味覚過敏だけでなく、聴覚過敏、嗅覚過敏、触覚過敏が加わると、ますます食べられないものが増えていきます。
食事は、いろいろなものから選択ができることから食欲が湧いてくるもので、選択肢が限られていると食欲にも影響してきます。選択肢が充分にあり、そのときの体調や気分に合ったものが食べられると消化や吸収にも影響が出てきます。食べることによって身につけられるはずの文化性が育たないという指摘もあります。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長の栄養学の師匠である山本辰芳先生(元日本臨床栄養協会副会長)は病院の栄養管理の三原則の言葉の一つとして、「文化性のない食事はエサである」と断じていました。発達障害児の食事づくりも、この言葉を掲げて対応の方策を考えていくべきであると認識しています。