地域住民の健康を支えるヘルスケア産業は、医療、福祉、食事、運動などの分野で多くの企業が参画しています。ヘルスケアは健康の気づきの機会を提供するサービスとの接触から始まりますが、気づきの機会は自治体、医療機関のほかに、交通機関、宿泊施設、商業施設、フィットネスクラブ、スポーツ団体などがあり、さらに情報メディア、IT産業などにも拡大しています。
気づきから実際の商品・サービスを活用するまでには、情報を取りまとめて有効に活用する対象者の元に届ける役目が必要となります。現在のヘルスケア産業は高齢者を対象としたものが主流となっていますが、経済産業省による次世代ヘルスケア産業の構想では、次世代のためのヘルスケアも想定しており、子どもを対象とした地域包括ケアのための商品・サービスの早急な開発についても求められています。
ここで岡山市の話題となりますが、岡山市のSDGs健康好循環プロジェクトでは「新たなマーケットやビジネスモデルの創出」が課題として掲げられており、子どものための地域包括ケアにおいても重要なテーマとなります。子どもの地域包括ケアの対象者である病児、障害児、発達障害児はヘルスケア産業の商品・サービスの受け手ですが、そのうちの発達障害児は通常とは異なる特性があって、この特性を活かすことによって成長後には次世代ヘルスケア産業の担い手となって活躍することが期待されている人材です。
ヘルスケア産業の一翼として位置づけられているスポーツ団体のうち生涯スポーツ団体は、生活習慣病・メタボリックシンドローム対策、ロコモティブシンドローム・フレイル対策、認知症対策などに成果をあげています。一生涯にわたって続けられるスポーツではあるものの、参加者はシニア層が多く、中高年(40歳以上)では生活習慣病やメタボリックシンドロームの改善を目指した方の参加が目立っている状況で、それ以外の年齢層の参加者は極めて少ない状況です。
発達障害児(18歳未満)と発達障害者(18歳以上)のうち青年層(40歳未満)は社会適応が苦手ではあるものの、自分の考えが受け入れられる場面では対応力があり、こだわりがあることについては集中力を発揮して打ち込めるという特性があります。生涯スポーツには多くの種類があって適するものを見つけやすいうえに、対象者に合わせてルール変更などに柔軟に対応している生涯スポーツ団体もあります。
発達障害児と発達障害者は生涯スポーツの参加者の立場だけでなく、指導者、運営者として活躍できる可能性があり、生涯スポーツの推進によって、岡山市のSDGs健康好循環プロジェクトが掲げる「健康寿命の延伸と社会保障費の抑制」を支える人材となることも同時に期待されています。
また、ESD(持続可能な社会づくりのための教育)は、子ども、親、祖父母の三世代の行動があって初めて達成できると認識しています。発達障害児と発達障害者は家族の強い健康意識によって支えられ、将来にわたっての健康教育の担い手ともなる存在であり、岡山市のSDGs健康好循環プロジェクトが掲げる「ESDを活用した市民活動の活性化、市民の活躍の場の創出」にも合致しています。