「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に基づき、独立行政法人日本学生支援機構が「合理的配慮ハンドブック」を作成しました。大学生に関する内容ですが、学習支援の参考になることから、発達障害児の注意欠陥・多動性障害の項目を例に、合理的配慮について紹介します。
(1)注意欠陥・多動性障害
注意欠陥・多動性障害は、対人関係の困難さと限定的な興味・関心・行動の2つの主症状からなる発達障害である。自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害等の診断を受けている学生も注意欠陥・多動性障害に含まれる。対人関係の構築の難しさや状況理解の困難さ等から、大学等では、授業・研究室活動・サークル活動等の多くの場面でトラブルを起こしてしまう場合も少なくない。また、診断を受けている学生の数も多くないために、本人が自分の障害を理解・受容することが難しい場合もある。さらに他の発達障害や二次障害としての精神疾患を併せ持つ学生もいる。修学上の困難がどのような要因で生じているのかを正確に把握し、配慮・支援していくことが大切となる。
(2)修学において起こりがちな困難さの例(制限・制約)
*教職員から言われたことを正確に理解できずに、指示どおりに行動できなかったり、指示とは異なる行動をしてしまうことがある。
*会話の細部にこだわってしまい、本質から外れたやり取りをすることがある。
*良好な対人関係を構築できずに、同級生の集団から孤立してしまうことがある。
*休講や教室変更等予定外の出来事に対して、スムーズに行動を切り替えられないことがある。
*聴覚過敏により、周囲の学生の声や特定の機械音に対する苦痛を訴えて、通常の教室環境では受講できないことがある。
*他者の表情や感情等の読み取りが難しいために、場にそぐわない発言や周囲の人の気分を害する言動をしてしまうことがある。
*緊張や不安が高まった場合に、自分の感情をコントロールできずに、急に退室してしまうことがある。
(3)合理的配慮の例
①試験時
試験問題やレポート課題において、問題文は、あいまいな表現(意味を取り違える可能性のある表現)を避け、明確な表現を心がける。また、回答方法の例示をする。
②授業
*授業中の支援機器の使用を許可する(授業の録音、PC筆記、板書の写真撮影等)。
*本人が受講しやすい座先を確保する。
*途中入室・退出に関する明確なルールを決めるとともに、本人が途中入室・退出した場合は、その理由を確認する。
*グループディスカッションでは、挙手してから順番に発言するなどの基本的な(暗黙な)ルールを確認するとともに、必要に応じて発言内容を板書するなどの工夫を行う。
*感覚過敏がある学生に、サングラスやノイズキャンセリングヘッドフォンの着用を認める。
*実験・実習授業において、本人と相談した上で、必要に応じて追加のマニュアル等を用意する。
*学外実習授業等において、本人が事前に実習施設を見学する機会を設ける。
③その他
*会話において伝わりにくさを感じる場合、主語述語等を省略せずに、5W1Hを明確にした、より直接的な表現を使う。
*口頭で伝わりにくい場合、文字や図を書いて説明する。
*休講等予定が変更される場合に、本人が情報を確認しやすい手段をあらかじめ相談して決めておく。
*本人の希望に応じて、コミュニケーションスキルの支援を提供している学内の専門部署や学外の支援機関を紹介する。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕