2016年に施行された障害者差別解消法(正式名称「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)によって、障害がある人の人権が障害のない人と同じように保障されるとともに、教育などの社会生活に平等に参加できるよう、合理的配慮をすることが国、地方公共団体、国民の責務とされました。
合理的配慮が行政、学校、企業などの事業者に求められるようになり、必要に応じて可能な限り、合理的配慮を提供することが義務化されました。
障害者差別解消法に基づき、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所・発達障害教育推進センターが、発達障害児の支援のための合理的配慮などについて解説をしています。これを参考に、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害がある子供の合理的配慮について紹介していきます。
自閉症のある子どもには、以下のような合理的配慮が考えられる。
①学習上または生活上の困難を改善・克服するための配慮
自閉症の特性である「適切な対人関係形成の困難さ」「言語発達の遅れや異なった意味理解」「手順や方法への独特のこだわり」等により、学習内容の週時の困難さを補完する指導を行う。(動作等を利用した意味の理解、繰り返し練習をして道具の使い方を正確に覚える等)
②学習内容の変更・調整
自閉症の特性により、数量や言葉等の理解が部分的であったり、偏っていたりする場合の学習内容の変更・調整を行う。(理解の程度を考慮した基礎的・基本的な内容の確実な習得、社会適応に必要な技術や態度を見につけること等)
③情報・コミュニケーションおよび教材の配慮
自閉症の特性を考慮し、資格を活用した情報を提供する。(写真や図面、模型、実物等の活用)また、細かな制作等に苦手さが目立つ場合が多いことから、扱いやすい道具を用意したり、補助具を効果的に使用したりする。
④学習機会や体験の確保
自閉症の特性により、実際に体験しなければ行動等の意味を理解することが困難な場合があるため、実際的な体験の機会を多く設定する。また、言葉の指示だけでは行動できないことがあるため、学習活動の順序をわかりやすくなるよう活動予定表を活用することがある。
⑤心理面・健康面の配慮
情緒障害のある子どもの状態(情緒不安や不登校、ひきこもり、自尊感情や自己肯定感の低下等)に応じた指導を行う。(カウンセリング的対応や医師の診断を踏まえた対応等)また、自閉症の特性により、二次的な障害として情緒障害と同様の状況が起きやすいことから、その予防に努める。
⑥専門性のある指導体制の整備
自閉症や情緒障害を十分に理解した専門家からの支援や、特別支援学校のセンター的機能および自閉症・情緒障害特熱支援学級、医療機関等の専門性を積極的に活用し、自閉症の特性について理解を深められるようにする。
⑦子ども、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮
周囲の子どもや教職員、保護者に対して、自閉症の特性として、他者からの働きかけを適切に受け止められないことや言葉の理解が十分ではないこと、習得方法や手順に独特のこだわりがあること等についての理解啓発を行う。
⑧災害時等の支援体制の整備
自閉症のある子どもは、災害時の環境の変化に適応することが難しく、極度に混乱した心理状態やパニックに陥ることを想定した支援体制を整備する。
⑨校内環境のバリアフリー化
自閉症の特性を考慮し、備品等をわかりやすく配置したり、導線や目的の場所が視覚的に理解できるようにしたりする。
⑩発達、障害の状態および特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮
衝動的な行動によるけが等が見られることから、安全性を確保した校内環境を整備する。また、興奮が収まらない場合を想定し、クールダウン等のための場所を確保するとともに、必要に応じて照明や音といった過敏性等を踏まえた校内環境を整備する。
⑪災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮
災害等発生後の環境の変化に適応できないことによる心理状態(パニック等)を想定し、外部からの刺激を制限できるような避難場所および施設・整備を整備する。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕