厚生労働省から、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が発表されました。
以下に、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の「良質な睡眠のための環境づくりについて」の各項目を紹介します。
〔温度の環境づくりで大切なこと〕
ヒトの深部体温(皮膚温でなく、脳や臓器などの身体の内部の温度)は、およそ24時間周期で変動しており、日中の覚醒時に上昇し、夜間の睡眠時には低下します。就寝前に、手足の皮膚血流が増加することで体温が外部に放散され、深部体温が低下し始めると、入眠しやすい状態となります。
入眠のタイミングの調整などにより、このような睡眠時の体温変動が円滑に行われやすい温度環境を整えることは、良好な睡眠を得るために重要です。
就寝前の入浴は手足の血管を拡張させることで、入浴後の熱放散を促進すると考えられています。いくつかの実験研究では、就寝前に身体を温めることで、入眠潜時(就床から入眠までの時間)が短縮することが報告されています。
我が国の高齢不眠症患者を対象とした実験においても、就寝前の入浴が速やかな入眠をもたらすことが報告されています。
実生活下で実施された研究からも、就寝の約1〜2時間前に入浴した場合、しなかった場合に比べて速やかな入眠が得られることが報告されています。
夏の寝室の室温上昇時に、睡眠時間が短縮し、睡眠効率が低下することが。実生活下の調査によって報告されています。夏の寝室はエアコンを用いて涼しく維持することが重要と考えられます。
冬に寝室温が低下した場合に、睡眠が悪化することを示した報告は乏しく、十分に寝具を用いることで寝床内で暖かく維持された場合には、睡眠への影響は少ないと考えられます。
一方で、冬の寒さについては、心疾患や脳卒中を予防する観点も重要です。夜中にトイレに行く場合や、早朝起床時に、急な寒さに曝されると、血圧が急激に上昇し、脳卒中・心筋梗塞の発症につながるおそれがあります。WHOの住環境ガイドラインは冬の室温を18℃以上に維持することを推奨しています。
冬に実施した調査研究からは、就寝前に過ごす部屋の室温が低いと、入眠潜時が延長することが示されていることから、冬季は就寝前にできるだけ温かい部屋で過ごすことも重要だと思われます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕