高齢者は脳の機能が低下していくとされるのは、機能を判定する試験法が大きく影響していると考えられていて、それを支持する声も強まっています。
脳力の高まり、加齢による低下は、記憶力と判断力によって著しいことから、知能試験でも認知機能試験でも記憶力と判断力の判定が中心となっています。知能試験では知識と理解、課題解決力も判定されます。
課題解決力は、これまでの経験が結果に影響を与えています。これは子どもの知能試験だけの結果ではなく、高齢者の脳力でもあります。高齢者は記憶力の低下が認められる一方で、想像力は低下しにくい、かえって高まっていくことも指摘されています。
想像力は、過去に記憶してきたことを組み合わせて、現状に対応する脳力であり、想像、連想、空想といったことは、多くの経験をしてきた高齢者が得意とすることとも言えます。
経験してきたことは、誰もが、いつでも引き出して想像力などに活かせるというものではありません。記憶したことは脳の海馬に短期記憶として蓄積されて、保存すべき情報なのか忘れてもよい情報なのかの判断がされて、その後に大脳皮質に蓄積されていきます。
このことは、机の上に並べておいた資料を整理して、重要な資料は引き出しに入れて、そうでない資料は机の上に置いたままにするか、ゴミ箱に捨てるといった行為に例えられます。
大脳皮質に蓄積された情報は、そのまま思い返すことがなければ忘れ去られることにもなります。重大な経験をした結果として記憶したことは、その後も記憶が引き出されて、新たな情報と組み合わせて、さらに新情報として記憶されることになります。
情報を出し入れすることで思い出し、新規更新をしていくためには、情報に関わる経験を繰り返すことが重要になります。長く生きてきたとしても、情報の収集、分析、蓄積、更新を続けていなかったら、せっかくの経験によって得られた情報が活かされないことになります。
長い時間をかけて経験してきたことは、たとえ現役を引退したとしても、重要な情報として脳の中で繰り返し出し入れをして、いつでも役立つように整理して磨きをかけてきた人は、老いを脳力として発揮できるということになります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕