歩くことによって脳の機能が高まることについて、前回(老いの脳力5)、AMPキナーゼなどの働きから考察してきました。AMPキナーゼの働きに対して、能力を高める効果としてあげられるのはt−PAで、これは30分ほどの運動をすると分泌量が増えます。
t−PAには血栓を溶かす作用があり、血栓は脳血管を詰まらせて脳血管疾患(脳梗塞、一過性脳虚血発作)の原因となることから、認知機能の維持には重要な因子となることが考えられています。
脳の機能を高めることがある一方で、逆に認知症の一歩手前とされる軽度認知障害のリスクを高めることがあります。
軽度認知障害のリスクを高めることとして加齢に加えて脳卒中(隠れ脳梗塞を含む)、心疾患(心筋梗塞など)、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満、甲状腺機能障害、頭部外傷、正常圧水頭症、喫煙歴、アルコール・薬物の影響、ビタミンB₁₂欠乏、過度のエストロゲン、テストステロン欠乏、不健康な食生活、ストレスや不安、うつ病、社会的孤立、そしてエクササイズの欠如があげられています。
エクササイズは一般には身体運動として認識されていますが、精神機能や脳機能の向上にも有効となっています。リスクが高い人は、そのリスク(マイナス要因)を減らすことと同時に、有酸素運動の時間を増やすことが重視されています。
有酸素運動は、ただ運動をすればよいということではなくて、効果的に息を吸い込み、取り込まれた酸素を脳に効果的に届けることが重要となります。そのためには、運動としては中程度と思われるようなウォーキングが最適です。
歩けばウォーキングになるということではなくて、一定の心拍数になり、酸素を吸い込む量が増える状態にすることです。それは、一緒に歩いている人と、なんとか会話ができる程度の速歩(早歩き)だと言われています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕