肌の状態に影響を与えるストレスと自律神経の関係は、消化管の中でもみられます。消化管というのは、口、口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門までを指していて、食べたものを消化、吸収、排泄するという一連の流れに関わる重要な器官です。
ストレスが高まっているときには、自律神経の交感神経の働きが盛んになっています。交感神経はアクセルの役割、副交感神経はブレーキの役割と前に説明しましたが、そのたとえからすると胃液を多く分泌させて消化を進めるのも、小腸での吸収を進めるのも交感神経の働きのように感じるかもしれません。
ところが、実際には消化も吸収も副交感神経の働きが盛んなときに進んで、交感神経の働きが盛んなときには消化も吸収も低下してしまうのです。交感神経の働きが強くなるストレス状態では、せっかくの食べ物の消化も、栄養素の吸収もよくないということになってしまうのです。
このことが肌の健康状態に大きな影響を与えることになります。
自律神経は基本的には交感神経が全身の臓器や器官などの働きを高めて、副交感神経が抑制するという関係になっています。ところが、食事をして栄養素を摂取するための中心となっているのは朝食と夕食です。この時間帯には副交感神経の働きが盛んになっています。
自律神経は活動時間の朝から夕方までは交感神経の働きが盛んになり、夕方から朝までは副交感神経の働きが盛んになっています。夕方以降は身体を休めるために副交感神経が中心になっていて、そのときに消化と吸収を進められるように、副交感神経の働きを盛んにしているのです。
副交感神経は腸の蠕動運動も進めてくれます。これは消化されたものを吸収される小腸まで早く運んでいく役目もしていますが、食べた結果の便通も副交感神経によって進むようになっています。
このように夕方以降は副交感神経の働きが盛んになっていなければならないのに、夕方以降にも興奮するような生活パターンになっている人が多くいます。スマホやテレビ画面のブルーライトは交感神経を刺激するものです。室内照明のLEDも交感神経を刺激します。眠る前まで交感神経が働きっぱなしのような状態では、消化にも吸収にも排泄にも影響が出てくるのは当然のことです。
肌の健康を保つためには、たんぱく質、ビタミンが必要になります。ビタミンには、それぞれ得意とする働きがあって、紫外線に負けないビタミンA、ビタミンC、ビタミンEが抗酸化作用がある“美肌ビタミン”として知られていますが、それと並んで重要になるのはビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂です。
ビタミンB₁は糖質のエネルギー代謝に必要で、疲労回復のビタミンとも呼ばれます。ビタミンB₁が不足すると糖質のブドウ糖への変化が遅れ、乳酸が疲労物質として蓄積され、全身の倦怠などを引き起こすことになります。食品では、豚肉、ウナギ、カツオ、レバー、大豆、ニンニクなどに多く含まれます。
ビタミンB₂は糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素で、特に脂質の分解・合成に深く関わっています。成長の促進、細胞の再生などの作用があり、美容のビタミンとも呼ばれます。ビタミンB₂が欠乏すると口内炎、舌炎症、口唇炎、角膜炎などが起こります。食品では、ウナギ、サンマ、レバー、大豆、牛乳などに多く含まれます。
ビタミンB₆は糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素で、特にたんぱく質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると貧血や肌荒れ、湿疹、神経系の異常などを引き起こします。食品では魚や肉に多く含まれますが、調理したり、加工食品にすると失われやすくなっています。
ビタミンB₁₂は脂質のエネルギー代謝の補酵素で、中枢神経や脳の機能を維持する作用があります。造血作用に関わり、骨髄で正常な赤血球を作り出すのに欠かせません。食品では、レバー、肉、魚介類などの動物性食品に多く含まれます。
4種類のビタミンB群は皮膚と粘膜の健康状態を維持するために必要ですが、これらの食品を食べていても、副交感神経の働きが盛んにならないと体内に取り込まれにくくなるので、ストレスは肌の大敵だということがわかります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕