脂肪をおいしく感じる理由

脂肪のおいしさは、舌で溶けることによって感じるので、不飽和脂肪酸の割合が多い豚肉の脂肪は甘く感じます。魚ではマグロのトロには不飽和脂肪酸が多く含まれ、溶けやすいので特に甘みを感じやすくなっています。
アイスクリームやチョコレートには植物油を加えたものもありますが、これは材料不足や価格の問題だけでなく、溶けやすい脂肪であることから、おいしさを感じやすいという理由もあげられています。
脂肪は単独でおいしく感じるだけでなく、水と混ざることでもおいしさを感じるようになります。“水と油”といわれるように本来は混ざり合わないものですが、これを合わせるためにエマルションが行われます。これは油の中に水の分子を分散させる方法と、水の中に油を分散させる方法によって乳化させる方法があります。マヨネーズや生クリームなどは脂肪が分散して溶けやすくなっているので、おいしく感じることができるわけです。
低温度では溶けにくい飽和脂肪酸であっても、おいしく感じるのは、遺伝子に組み込まれた記憶のせいだといわれています。脂肪のエネルギー量は1g当たり約9kcalで、たんぱく質と糖質は約4kcalなので、2倍以上のエネルギー量があることは、よく知られています。
少ない量で多くのエネルギー量が摂れることは、食べ物が少ない時代を生き抜くには重要なことです。できるだけ多くのエネルギー量が摂れるものを食べられるように、脂肪がおいしいと脳に刷り込まれてきたわけです。その記憶は、食生活が豊かになった今も変わることがなく、脂肪を多く摂りすぎるようになってしまいました。特別に意識をしなくても、脂を摂りすぎるのなら、意識をして摂るべきなのは油ということになります。
魚類や植物油に多く含まれるオメガ3の油は中性脂肪やコレステロールを減らし、生活習慣病のリスクを低減させる作用はあるものの弱点もあります。それは酸化しやすいことです。また、加熱によって酸化が進みやすく、有害なトランス脂肪酸を生成させます。スイーツにはトランス脂肪酸が多いことが指摘されるマーガリンやショートニングが使われることが多いので、できれば減らしたいものです。