全身に60兆個以上ある細胞の中にはエネルギー産生の小器官のミトコンドリアがあります。ミトコンドリアは糸(ミト)粒子(コンドリア)を意味するギリシャ語で、直径1μm(マイクロメーター)のサイズで、1つの細胞には100個から2000個のミトコンドリアが存在しています。
ミトコンドリアの重量は体重の10%ほどで、体重50kgの人では5kgのミトコンドリアを持っていることになります。それだけ重要な器官であり、人間が多くのエネルギーを必要としていることがわかります。
ミトコンドリアが特に多く存在しているのは筋肉細胞(筋繊維)で、多くのエネルギーは筋肉細胞で作られています。骨格筋など筋肉が多い人ほど代謝が高まって、太りにくく、やせやすいというのはミトコンドリアの数にも関係しています。
食事で摂取する三大エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質は、体内ではブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸となって細胞内に取り込まれ、ミトコンドリアの中にあるTCA回路によってエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が作り出されています。
ATPは、アデニンという化合物にd‐リボースという糖が結合したもので、アデノシンに3分子のリン酸がつながったものがATPです。リン酸の結合部位にエネルギーが保持され、ATP分解酵素によってATPから1分子のリン酸が切り離されてADP(アデノシン二リン酸)になるときにエネルギーが発生します。
全身の細胞は、すべてミトコンドリアで産生されたATPを生命維持や活動などのためのエネルギーとして利用しています。ミトコンドリアの量が多いほど、ブドウ糖や脂肪酸を使ってATPが多く合成されることになり、基礎代謝量が多くなります。そのため、ミトコンドリアを増やすことが代謝を高める基本となります。
ミトコンドリアを増やすためには、ミトコンドリアが多く存在する筋肉が活発に動いてエネルギー代謝が盛んになることが必要となります。筋肉運動は白筋(速筋)が主に使われる無酸素運動と、赤筋(遅筋)が主に使われる有酸素運動に大きく分けられますが、ミトコンドリアは酸素を取り込んでエネルギー代謝を行うことから、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を定期的に行うことで増やすことができます。
ミトコンドリアによって産生されたATPが活動のために足りているときにはミトコンドリアは増えにくくなっていますが、運動によってATPが不足すると、ATPを増やすためにミトコンドリアの分裂が始まります。このことから、ミトコンドリアの数を増やすためには、ATPが多く使われるように息切れするほどの速度で早歩きするなどの身体に負荷がかかる有酸素運動がすすめられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕