脳の健康寿命1 エネルギー代謝の仕組み

私たちの身体は、すべての細胞の中で産生されるエネルギーによって働いています。細胞の中にはミトコンドリアというエネルギー産生の小器官が数多くあり、そのすべてを合わせると全体中の10%ほどの重量となります。それだけ重要な器官であり、細胞で産生されるエネルギーなしには一時たりとも活動することができません。
細胞のエネルギー源になるのは糖質、脂質、たんぱく質で、これ以外はエネルギー源とならないこともあって三大エネルギー源と呼ばれています。食品として摂った糖質は分解されてブドウ糖となります。同じく脂質は脂肪酸に、たんぱく質はアミノ酸となって細胞の中に取り込まれていきます。ミトコンドリアの中に取り込まれると、どれもアセチルCoAに変化して、その後はエネルギーを作り出すTCA回路に入り、化学変化をしながら一周するとエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が発生します。このATPからリン酸が1個はずれるときにエネルギーが発生するという仕組みになっています。
細胞の中で発生したエネルギーは、その細胞の中でしか使われません。電気のように別のところに流れて行くということはなく、地産地消のような使われ方をしています。神経伝達も細胞の中のミトコンドリアで発生したエネルギーが使われていますが、神経は全身に張り巡らされていて、情報も全身に伝わっています。これはニューロンという神経細胞の端のシナプスまできた情報がグルタミン酸として放出され、それが別のニューロンに受け取られて情報として伝わり、次々にバトンタッチされていきます。
脳を正常に働かせるためには、脳細胞にエネルギー源が取り込まれて、細胞内でエネルギーが産生される必要があるわけですが、三大エネルギー源のうち脳細胞に取り込まれるのはブドウ糖だけです。ブドウ糖が含まれた糖質が不足すると、脳細胞を働かせるためのエネルギーを充分に作り出すことができなくなり、脳の機能も低下することになります。