歯周病があると、充分に噛めなくなり、栄養摂取にも影響が出ることから、生活習慣病にも寿命にも、そして認知機能にも影響を与えることになります。
厚生労働省が掲げる“8020運動”は、80歳になっても20本の歯を残すことを目指していますが、これは栄養摂取の問題だけでなくて、噛むことの健康効果、好きなものを食べるために外出できることが健康度を高めるということもあり、認知機能の低下を防ぐことができると報告されています。
海外のデータですが、台湾の50歳以上の歯周病患者9291人と健康な(歯周病がない)1万8672人の10年間の追跡調査を実施しています。その結果、慢性歯周炎のある人は、ない人に比べてアルツハイマー病の発症リスクが1.7倍にもなっていたということです。
アルツハイマー病で死亡した患者の脳組織からは歯周病菌(ジンジバリス菌)が検出されたのに対して、正常な人の脳組織からは検出されなかったという報告もされています。ジンジバリス菌はジンジパインという酵素を発生させますが、その酵素の量が多いほどアルツハイマー病に見られるタウタンパク質(脳に蓄積して神経細胞を死滅させるタンパク質)が多くなっていたといいます。
歯周病は糖尿病との関係も明らかにされています。歯周病が糖尿病を悪化させ、糖尿病が歯周病を悪化させるということですが、糖尿病患者と糖尿病予備群を合わせると国民の5人に1人が該当するという時代だけに、これは脳の健康寿命を延ばすためには重要な情報です。
次に国内での報告ですが、糖尿病患者が歯周病の治療をした結果、炎症の指数が減少して、ヘモグロビンA1c値が低下していたと報告されています。ヘモグロビンA1c値は過去1〜2か月の血糖値の状態を示す検査結果です。
「糖尿病治療ガイドライン2019(日本糖尿病学会)では、2型糖尿病の患者への歯周病治療が推奨レベルAとなっています。糖尿病の合併症といえば、網膜症、腎症、神経障害、足病変、動脈硬化性疾患が五大合併症とされていますが、歯周病は今や第六の合併症と呼ばれるようになっているのです。