脳の健康寿命115 睡眠の質の低下が認知機能に影響する

睡眠は身体の疲労回復だけでなくて、脳の疲労回復にも重要なことです。ただ寝ている時間が長いというだけではなくて、睡眠の質がよくないと脳の疲労も回復しにくくなります。脳の疲労というと精神的な疲れ、うつ症状などが想像されるところですが、認知症の原因物質とされているアミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積されやすくなることが知られています。

アミロイドβは脳内で発生しても眠っている間に老廃物として排出されます。すべてが排出されるわけではなくて、徐々に蓄積されていくので、年齢を重ねると認知症が発症しやすくなると考えられています。それだけでなく、高齢になると自律神経の副交感神経の働きが低下して、交感神経の働き過ぎを抑えにくくなることから、熟睡しにくくなり、これが脳の疲労を高めることにもなります。

これに加えて、高齢になると睡眠ホルモンのメラトニンの分泌量が減ることもあげられます。メラトニンの分泌のピークは10代で、睡眠の質が木になる40代では6分の1ほどになり、高齢者では10分の1にも減ってしまいます。

その結果として、睡眠時間が短い、睡眠の質が低下して熟睡できないということも、アミロイドβの排出を遅らせて、蓄積を進めていくようになります。このこともあって、睡眠はアルツハイマー型の認知症のリスクを高めるとされているのです。

睡眠に関する調査は、さまざまな機関で行われていますが、厚生労働省の「健康実態調査結果の報告」(2021年)によると、40歳以上の約9割が「寝付きに時間がかかった」「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」「早く目が覚め、それ以上眠れなかった」といった睡眠に関わる不満を持っていることが発表されています。