他人との交流は、認知機能の向上に役立つということは以前から言われてきたことです。ただ交流する機会を増やすだけでなくて、認知機能を高める効果は明らかになっていることに臨みたいというのは、残された時間が、そう長くはないと感じている人が強く望んでいることです。
その方法の一つとして考えたいのは“笑い”の効果です。その例として取り上げるのは東北大学の研究グループによる研究成果で、この研究では介護を受けていない高齢者1万2571人を6年間にわたって追跡調査しています。笑いが起こる状況と、その後の会議の必要性との関連について分析していて、追跡期間中に1420人(11.3%)が新規に要介護認定を受けています。
追跡の結果、夫婦や子ども、孫、友人と接しているときなど他の人と交流しているときに笑う人は、テレビや芝居などの演芸などを見て1人でいるときだけ笑う人に比べて、要介護認定されるリスクが23%低くなるという結果が得られています。
中でもよい結果が現れたのは、友人と一緒に笑うことで、1人でいるときにだけ笑う人と比べると、要介護認定されるリスクが30%も低くなっていました。
笑うことは精神面だけでなくて、腹部に力を入れて息を短く吐く腹式呼吸を繰り返しています。「腹がよじれるほど笑う」という表現があります。「腹の皮がよじれる」というのが正しい表現だという考えもあるのですが、実際によじれるかどうかは別にして、腹筋が激しく動くのは事実で、その分だけ体内に取り込まれる酸素も増えていきます。
1回あたりの換気空気量は胸式呼吸では500mlほどですが、腹式呼吸では2000mlにもなるといいます。くすくすと笑うのではなくて、大声で笑うことは、まず体内の二酸化炭素が排出されて、その出た分に合わせるように酸素が体内に取り込まれます。全身を使うような笑いこそが酸素を取り入れ、これを使って有酸素運動のように多くのエネルギーを作り出すことができるようになります。
大きく呼吸をすることで肺からは生理活性物質のプロスタグランジンが分泌されます。プロスタグランジンには血管拡張作用があります。こういったことも加わって、血流が盛んになって、認知機能を向上させることが期待されているのです。