脳の健康寿命117 知っておきたい“隠れ認知症”

認知症というと記憶力が低下することと考えられがちですが、記憶力にはあまり変化がなくて、判断能力としての認知が低下することがあります。これが新たな問題とされていて、“隠れ認知症”とも呼ばれています。これは認知症の予備群とされる軽度認知障害とは異なるものです。

軽度認知障害は、認知症を判断するテストによって、認知症と診断される状態ではないもの、認知機能が低下している状態を指しています。認知症との違いは、日常生活への影響がないところで、少し記憶力が低下してきた、年相応と見られることから、テストをしないと判定することができません。

このまま認知機能の低下が進むと認知症になる可能性が高いものの、そのままの状態で止まる人もいれば、正常な範囲に戻ることも可能とされています。

軽度認知障害の発現率は13%と推定されていて、認知症予備群は400万人はいると推計されています。この400万人すべてが軽度認知障害ではなくて、このうち250万人は隠れ認知症と推測されています。

2015年には認知症患者が460万人で、「2025年に認知症患者が700万人に達する」と言われて国をあげて対策が取られてきました。わずか10年で1.5倍以上になるとして危機感が煽られてきたものの、あと3年に迫っても、まだ解決策は見えてきません。

明らかな認知症だけでなく、隠れ認知症も含めた認知症予備群を加えると1000万人を超える状況が目の前にきているだけに、何もしないで“座して死を待つ”ようなことであってはいけないはずです。

まだ自分の努力で改善できる軽度認知障害から元の健康な状態になれるように、できることから軽度認知障害にもならないようにすることを願っています。