脳の健康寿命118 DHA、EPA、ARAと認知機能の関わり

国立長寿医療研究センターが、多価不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、ARA(アラキドン酸)の摂取量が多いと認知機能に関わる側頭皮質や前頭皮質などの局所脳体積の減少が抑制される可能性を発表しました。

この調査研究は、愛知県大府市・東浦町の地域住民から性・年代別に無作為に選出された40歳以上の中高年者を対象に、医学・心理・運動・身体組成・栄養など多角的な観点から老化・老年病予防策を検討する大規模コホート研究となっています。

魚、卵、肉などから日常的に摂取されるDHA、EPA、ARAは脳のリン脂質の主要な構成成分で、加齢によって脳内の量が減少することが知られています。これらの成分を高齢者が補うことで注意、作業記憶などの認知機能が維持されるとの報告があります。

今回の調査研究に参加したのは認知症の既往や認知機能障害の疑いがなくて、頭部MRI測定などの解析をした60〜89歳の男女810人で、DHA、EPA、ARAを摂取した2年間の局所脳体積の変化量が解析されました。

その結果、ARAの摂取量が多いと前頭皮質の体積変化量の減少が小さく、認知機能低下のリスクも低いことが明らかになりました。DHAとEPAの摂取が少ない集団で、DHAとEPAの摂取が多くなった場合には、側頭皮質の体積変化量の減少が小さいという結果になりました。

日本人は魚介類の摂取量が多いことから、DHA、EPA、ARAの摂取による認知機能の好結果が出にくい国民だと考えられてきていました。しかし、ARAについては魚介類の摂取量に関係なく好結果が得られ、DHAとEPAは調査対象の摂取量に制限があったといっても多く摂取することで好結果が得られています。

農林水産省の食料需給表によると、魚介類の摂取量は1人1年あたりの消費量は2001年の40.2kgから2017年には24.4kgに大きく減少しています。今の日本人は、DHA、EPA、ARAの効果が出やすい食生活になっているということがいえます。