脳の健康寿命2 脳細胞のエネルギー源

脳細胞のエネルギー源はブドウ糖だけだと前回紹介しておきながら、今回は違う話からスタートします。ブドウ糖が唯一のエネルギー源となっているのは平常時であって、多くのエネルギーが必要になるときには脂肪酸から変化したケトン体を使うことがあります。
ブドウ糖が脳細胞のエネルギー源になるのは、血管と脳細胞の間にある血液脳関門という脳細胞に余計なものを通過させないためのフィルターのような役割をする物質交換を制限する器官があるからです。この血液脳関門をブドウ糖以外で通過することができるのがケトン体ということです。
体内にはブドウ糖が結合したグリコーゲンが400gほど補助のエネルギー源として蓄積されています。主に蓄積されているのは肝臓と骨格筋ですが、これをエネルギー量に換算すると、ブドウ糖は1gあたり約4kcalなので、蓄積されているのは1600kcalだけです。成人男性の平均的な1日の消費エネルギー量は2500kcalとされているので、900kcalも不足することになります。
脳細胞のエネルギー使用量は全体の23%とされるので、2500kcalのうち575kcalが必要です。蓄積されているグリコーゲンの1600kcalのうち23%は368kcalとなり、64%を満たすことができる量です。ということは残りの36%に当たる900kcal分の糖質、つまり225gのブドウ糖を摂らないと不足することになり、これをケトン体が補うことになります。ケトン体は血液中のブドウ糖が不足したときに、肝臓で脂肪酸から合成されるという仕組みになっています。
脳が疲れてきたときに甘いものを食べると疲れがとれるのはブドウ糖が補われた結果です。ちなみに砂糖はブドウ糖1分子と果糖1分子が結合したもので、脳の機能を正常に保つためには砂糖に換算すると450gも摂らなければならないことになります。