有酸素運動をするとアルツハイマー型認知症を引き起こすタンパク質であるアミロイドβが減ることが確認されています。この変化は、有酸素運動によって血管を新たに作る血管新生因子が脳内で増加して、血流が盛んになることによって起こると考えられています。
AMPキナーゼには細胞にあるインスリン受容体の感受性を高める作用があり、全身の細胞に存在しているものの、特に筋肉から多く分泌されています。有酸素運動をするとエネルギー源としてのブドウ糖の消費が増えることがあげられますが、それに加えてAMPキナーゼもあり、より血糖値が下がりやすくなるわけです。AMPキナーゼは有酸素運動を始めてすぐに増え始めるので、短い時間の有酸素運動でも効果があります。
これに対してt−PAは30分ほどの運動をすると分泌量が増えます。t−PAには血栓を溶かす作用があり、血栓は脳血管を詰まらせて脳血管疾患(脳梗塞、一過性脳虚血発作)の原因となることから、認知機能の維持には重要な因子となります。
軽度認知障害のリスクを高めることとして加齢に加えて脳卒中(隠れ脳梗塞を含む)、心疾患(心筋梗塞など)、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満、甲状腺機能障害、頭部外傷、正常圧水頭症、喫煙歴、アルコール・薬物の影響、ビタミンB₁₂欠乏、過度のエストロゲン、テストステロン欠乏、不健康な食生活、ストレスや不安、うつ病、社会的孤立、そしてエクササイズの欠如があげられています。
エクササイズは一般には身体運動として認識されていますが、精神機能や脳機能の向上にも有効となっています。リスクが高い人は、そのリスク(マイナス要因)を減らすことと同時に、有酸素運動の時間を増やすことが重視されています。