脳の認知機能は、記憶に関する部分だけが影響をしているわけではありません。全身の老齢化が与えることも大きくて、高齢者にみられる身体と疾病の特徴について知っておくことが大切になります。その高齢者の身体と疾病の特徴は、老年に無関係で起こるものと老年期に特に増えるものとに分類されています。(日本医師会の資料より)
加齢の変化がないものとしては、以下のことがあげられています。
「めまい、息切れ、胸部腫瘤、胸腹水、頭痛、意識障害、不眠、転倒、骨折、腹痛、黄疸、リンパ節腫脹、下痢、低体温、肥満、睡眠時呼吸障害、喀血、吐下血」
前期老齢者(65〜74歳)で増加するものとしては、以下のことがあげられています。
「認知症、脱水、麻痺、骨関節変形、視力低下、発熱、関節痛、腰痛、喀痰、咳嗽、喘鳴、食欲不振、浮腫、やせ、しびれ、言語障害、悪心嘔吐、便秘、呼吸困難、体重減少」
後期老齢者(75歳以上)で増加するものとしては、以下のことがあげられています。
「日常生活動作(ADL)低下、骨粗鬆症、椎体骨折、嚥下困難、尿失禁、頻尿、譫妄、鬱、褥瘡、難聴、貧血、低栄養、出血傾向、胸痛、不整脈」
前期高齢者で増加するものとして認知症があげられています。認知症は脳細胞そのものが関係するアルツハイマー型認知症と、血管の老化が関係する脳血管性認知症とに大きく分けられますが、脳血管の老化が年齢以上に進んでいると認知症のリスクは高まります。アルツハイマー病がある程度進んでいたとしても、脳血管に異常がなければ重度の認知症にならなかったという例も少なくなりません。
脳血管の老化は動脈硬化が原因で、その要因となっているのは糖尿病、高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症です。これらは高齢になると増えていくというよりも、若いときからの生活習慣(食事、運動、ストレスなど)に影響されることから、認知症として現れるのは前期高齢者だとしても、前期高齢者だけのリスクということではないのです。