脳の健康寿命55 加齢による呼吸の生理学的変化

脳の健康寿命を延伸させるためには、高齢者の身体的特徴について理解しておくことが大切となります。呼吸の変化は、案外と見逃していることで、その特徴について紹介します。
*呼吸筋の筋力低下
換気に関与する主な呼吸筋(横隔膜・肋間筋)は、老化とともに筋力が低下し、十分に呼吸運動ができなくなります。高齢者は特に息を吐き出す作業が大変で、換気が不十分となりやすい特徴があります。
*胸壁の硬化
呼吸運動では息を吸うときに肋骨が横に張り出し、さらに肋骨全体が持ち上がると同時に肋骨が前に張り出します。これによって肺の膨張・収縮運動が肋骨に妨げられることなく行われます。しかし、高齢者は肋軟骨が石灰化して硬くなり、支持組織の弾力性も低下することから肋骨が十分に動かなくなり、肺の運動が制限されるため、肺内ガス交換率が低下し、低酸素血症が進行します。
*肺弾性収縮力の低下
肺弾性の消失や肺コンプライアンスの増大・姿勢の変化により、肺活量が減少します。
*気管支分泌物の運搬能力の低下
気管支粘膜に密生する線毛運動の低下に伴い、気管支分泌物の運搬能力の低下が起こり、分泌物が詰まりやすく、炎症を起こしやすくなります。
*予備呼吸量の減少
肺胞が拡張してくるため、予備呼吸量の減少が著名で、残気量増加がみられます。