脳の健康寿命64 エネルギー代謝が神経伝達を高める

脳の働きを正常に保つには、脳細胞で作り出されるエネルギー物質のATPが必要です。ATPはアデノシン三リン酸(Adenosine tri-phosphate)の略で、アデノシンとリン酸3個が結びついたものです。アデノシンはアデニン(塩基性物質)とリボース(単糖)から構成されるヌクレオシド(塩基と糖が結合した化合物)です。
ATPは、細胞のミトコンドリアの中のTCA回路でエネルギー源(ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸)から作り出されると一般には説明されているのですが、実際にはATPが作られるわけではありません。アデノシンとリン酸2個が結びついたADP(アデノシン二リン酸)にリン酸1個が結びついて作られます。
このときにエネルギーが蓄積されて、次にリン酸が1個外れるときにエネルギーが発生します。TCA回路ではATPとADPへとリン酸が結びついたり外れたりすることが起こっていて、そのためにTCA回路にエネルギー源が取り込まれているのです。
全身の細胞は、3種類のエネルギー源を取り込んでいるのですが、脳細胞だけはブドウ糖しか通過できないために、ブドウ糖が唯一のエネルギー源となっています。ブドウ糖を取り込むことによって発生したエネルギーは、その細胞の中でしか使われません。電気のように他の細胞に流れていくということはありません。それなのに脳細胞で神経伝達が行われているのは、神経細胞の端から神経伝達物質が放出されて、これを次の神経細胞の端が受け取って、情報が伝わっていくからです。
この働きをスムーズにするには脳細胞でのエネルギー代謝を高めることが重要で、そのためにはエネルギー源をミトコンドリアとTCA回路で使われる形のアセチルCoAに変化させるために欠かせない水溶性ビタミンが必要になります。それはビタミンCを除いた、すべての水溶性ビタミン(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸)なので、多くの種類の食品をバランスよく摂るか、サプリメントのマルチビタミンや栄養補助食品(カロリーメイトなど)を摂ることが求められるのです。