糖尿病は全身の細胞がエネルギー源のブドウ糖を取り込みにくくなる状態で、中でも脳細胞はブドウ糖が唯一のエネルギー源となっていることから、糖尿病になると脳細胞の活性度が低下して、認知症のリスクが高まることが指摘されています。糖尿病の予防と改善には糖質制限がよいという考え方もあって、実践している人も少なくありません。
糖質制限をして、肝心なブドウ糖が減ってしまったら仕方がありません。ただでも糖尿病になるとインスリンの分泌が低下しているためにブドウ糖の細胞への取り込みが低下しています。それなのに糖質を減らすのは、ブドウ糖不足による脳の機能低下の原因になるとの考えもあります。
糖質制限は、他にも脳の機能低下に結びつくことが懸念されています。それは神経伝達物質のセロトニンが減ってしまうからです。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれています。
神経伝達物質は脳細胞と脳細胞をつないで情報を伝えていく重要な役割をしています。神経伝達物質の中で最も重要なものはグルタミン酸ですが、グルタミン酸が働くためにはブドウ糖が必要になります。ブドウ糖不足になると脳が快感を得にくくなることが報告されています。
認知症は脳の情報伝達が低下だけでなくて、情動(喜び、悲しみ、怒り、恐怖、不安などの激しい感情の動き)が低下することが起こります。この情動に関わる神経伝達物質がセロトニンで、これは必須アミノ酸のトリプトファンから作られます。トリプトファンは肉、魚、卵、乳製品に多く含まれています。
トリプトファンの摂取量を増やせばセロトニンが増えるように思われがちですが、トリプトファンと一緒にブドウ糖が含まれた糖質も必要になります。ブドウ糖によって血糖値が上昇してインスリンが分泌されるとトリプトファンが脳細胞に多く取り込まれるようになるからです。
糖尿病は血糖値が高くなることから膵臓がインスリンを出し続け、それが続くことで膵臓が疲弊して、徐々にインスリンの分泌量が減っていきます。そのために細胞にブドウ糖が取り込まれにくくなり、ずっと血糖値が高い状態となります。
糖質制限ばかりしていると、セロトニンが増えにくくなるので、認知症の原因にもなってしまうということです。