脳の健康寿命66 頭がよくなるDHA

今の前期高齢者が子どもだったころのこと、「頭がよくなるから」と親や祖父母に言われて、化学調味料を料理に振りかけて食べていたことを記憶している人も多いかと思います。この場合の頭がよくなるというのは記憶力のことを指していて、これを覚えていないとしたら記憶がよくならなかったせいなのか、それとも化学調味料のことなど記憶に残らない程度のことだったのか、定かではありません。
化学調味料の効能については、旨味成分のグルタミン酸が脳を活性化させるということでしたが、後に頭がよくなるというよりも脳を興奮させた結果だということが明らかにされて、急に頭がよくなるという説は萎んでいきました。
それと時期を同じくして登場したのが、「魚を食べれば頭がよくなる」というフレーズで、スーパーマーケットなどの鮮魚売り場で耳にした「おさかな天国」という楽曲です。この場合の頭がよくなる成分は魚油のDHA(ドコサヘキサエン酸)のことです。
DHAの研究が始まったのは、日本人は魚の摂取量が多く、頭がよい子どもが多かったことがきっかけでした。魚には不飽和脂肪酸のDHAとEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれていて、複数の研究結果からDHAが注目されました。脳細胞には10%ほどDHAが含まれていますが、記憶機能がある海馬には20%以上のDHAが含まれていることも、頭がよくなる説に影響を与えました。
赤ちゃんの脳は350gから6か月までに650g、1歳までに950gほどに増えていきます。この間に脳細胞で情報を伝えるシナプスが急激に増えていくのですが、シナプスの35%がDHAとなっています。DHAは母乳に多く含まれ、赤ちゃん用の粉ミルクにも多く含まれています。
そういった事実から、DHAを摂ると頭がよくなるように思われるかもしれませんが、DHAが不足すると記憶に影響を与えることはわかっていても、DHAを多く摂ったからといって頭がよくなるとは限りません。日本人は魚からDHAを多く摂っていての現状なので、それ以上のことを期待できるのかというと、まだ定かではありません。