脳の健康寿命67 脳の機能とEPAの関連性

魚を食べると頭がよくなるという話から、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれる青背魚の漁獲量が多い地域で、DHAを入れたパンを学校給食に出すという実験が行われました。1年目の結果は頭がよくなる(知能指数の向上)という結果は出なくて、目がよくなる(視力の向上)という結果が出ました。これを続ければ、きっと望む結果が出るものと2年、3年と続けられたのですが、結果は1年目と同じで、この実験は終了になりました。
脳によいというのは、記憶機能がある海馬には20%以上のDHAが含まれていること、脳細胞で情報を伝えるシナプスの35%がDHAということが裏付けとして試験が始められたわけです。目によいという結果が出たのは、DHAを摂取した乳児の視力が高いということがわかり、DHAが網膜や視神経の働きを活発にすることも確認されました。
視力がよくなれば、目から飛び込んでくる情報量が増えて、脳を刺激するので認知機能を保つのによいという説を言い出す人もいるかと思いますが、実験で確認されているのは乳児です。それも不足すると視力が低下するので、多く摂ったほうがよいという結果であって、大人が、それも高齢者がDHAで目の機能が高まるかどうかは、まだ確かめられていません。
脳の健康寿命に関わるのは脳の血流で、これを高める作用は同じく魚油に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)では確認がされています。EPAというと血液サラサラの脂肪酸で、中でも毛細血管の微小循環を高めることが確認されています。というのも、EPAを原材料にした医薬品のエパデール(EPA製剤)は、脂質異常症の有効な治療薬として、さまざまな試験が行われています。動脈硬化の予防と改善は明らかで、分量こそ魚油とは違うものの、同じ効果が得られることがわかっているからです。
認知症はアルツハイマー病のほかに脳血管の機能低下が原因となっているため、EPAは予防のためには積極的に摂るべき脂肪酸だといえます。