脳の健康寿命72 コロナ禍で認知症患者が300万人増える

認知症患者は20年後には減少するという東京大学の予測を前回紹介しましたが、そんなにも先の話は関心がないという人も少なくありません。男性の平均寿命は81歳を超えていますが、前期高齢者になったばかりの65歳でも20年後といえば85歳です。そのときに認知症患者が減っていたとしても、その前に認知症になってしまうのではないか、という心配があるのは当然のことです。
これまでの認知症患者の予測は2025年に700万人とされてきました。新型コロナウイルス感染症が拡大して、それが2年以上も続くことは想像されなかっただけに、国民の健康度は大きく低下しました。その結果が認知症につながるのではないか、というのも当然の疑問です。
コロナ禍というと経済的な面が強調されることも多いものの、外出自粛、コミュニケーションの機会の減少、通院や健診の減少など、どれも健康面ではマイナスのことばかりが続きました。歩くだけでも血流が高まり、脳に運ばれる酸素が増えて、脳の活性化が進むのに、歩くことすら禁止状態になり、マスクの着用で体内に取り込まれる酸素の量も減りました。家にいる機会が増えたうえにストレスがかかったことから食事量や飲酒量が増え、生活習慣病のリスクも高まりました。
コロナ禍を経験して、どのような健康面の影響が出ているのかを知りたいところです。2025年には認知症患者が300万人増えて1000万人になるとの予測もされているのですが、その傾向を把握するための期待されている厚生労働省の「国民健康・栄養調査」は令和元年版が発表されて以降、充分な調査ができないということで、2年連続で発表されていません。早くても令和4年の年末か5年の初めに発表されるという状態で、肝心な健康度の変化、認知症に影響する健康面での変化がわからない状態です。
すでに認知症は気づかれないところで相当に増えていると考えて、対策を始めなければならない段階になっていると認識しています。