糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べて認知症になる可能性が2倍ほど高くなるとされています。認知症はアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症に大きく分けられますが、糖尿病の人はアルツハイマー型認知症では2.05倍、脳血管性認知症では1.82倍も高くなるとの報告があります。
糖尿病といっても血糖値によって複数の段階に分けられていますが、食後血糖値が200mg/dl以上の人では、120mg/dl未満の人に比べて、アルツハイマー型認知症では3.42倍、脳血管性認知症では2.66倍にもなっています。
この結果は、久山町研究という福岡県久山町の住民を対象に1961年から今も続けられている大規模調査によるもので、人口構成や職業分布などが日本全体の平均と似通っていることから、日本人の健康の指標とされています。
糖尿病の人の認知症のリスクが高いのは、一つは脳のエネルギー源と関係があります。全身の細胞のエネルギー源は糖質(ブドウ糖)、脂質(脂肪酸)、たんぱく質(アミノ酸)ですが、脳細胞だけはブドウ糖しか取り込めません。糖尿病というと血液中のブドウ糖が多くなり、血糖値が高まるものですが、これは細胞にブドウ糖を取り込むために必要なホルモンのインスリンが不足していることが原因で、細胞に充分にブドウ糖が取り込まれないので血液中で濃い状態になっているのです。
ということで、糖尿病では脳細胞のエネルギー源であるブドウ糖が不足することから、脳細胞が充分に働いて新陳代謝を繰り返すことができなくなることから、アルツハイマー型認知症のリスクが高まるのです。
脳血管性認知症は血管の老化が大きく影響しています。血糖値が高くなると血管の細胞にブドウ糖が多く取り込まれ、これが糖アルコールに変化します。細胞は一定の水分量が保たれることで正常に働くことができます。糖アルコールが増えると水分が減り、そのために細胞の新陳代謝が遅れて、細胞の老化が進むことになります。糖尿病は血管の病気であったのです。