認知症はアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が代表的なものですが、アルツハイマー型認知症は糖尿病によって発症しやすくなっています。アルツハイマー型認知症は脳の組織にアミロイドβというタンパク質が多く蓄積されることで起こることが知られています。
アミロイドβの蓄積が脳の神経細胞の死滅を引き起こして、脳を萎縮させていくことが考えられています。考えられているというのは、アミロイドβが原因というのが現在の主流の説ではあるものの、アルツハイマー型認知症になった結果としてアミロイドβが増えているとの説もあるからです。
主流の説に従うなら、アミロイドβが増える原因を探り、それを抑えることが認知症予防に有効になるわけですが、アミロイドβは脳細胞の糖化が原因ではないかと考えられています。糖尿病の指標の一つにヘモグロビンA1cがあります。これは赤血球の色素成分のヘモグロビンがブドウ糖と結合したもので、その量によって長期間(2〜3か月)の血糖値の状態がわかります。
ヘモグロビンA1cの量が増えているということは、脳細胞の糖化も進んでいるということですが、アルツハイマー型認知症の高齢者の患者の前頭葉を調べたところ、糖化物質のAGEの量が健康な高齢者に比べて3倍以上にもなっていたとの報告があります。
血糖値が高い場合には正常範囲まで下げるようにすることは、糖尿病を予防すると同時に、アルツハイマー型認知症を予防することにもつながります。日本人の成人の10人に1人が糖尿病患者、10人に1人が糖尿病予備群であることが厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果として発表されています。合わせて5人に1人が高血糖状態であることを考えれば、血糖値の抑制は国民的な認知症予防につながることを示しています。