糖尿病は、血液中のブドウ糖が高濃度になる病気で、血糖値が高い状態が長期間続くと、血管細胞の新陳代謝が低下して、徐々に血管が硬くなり、弾力性も弱くなっていきます。これは古くなったゴム管がボロボロになっていくのと似た状態で、もろくなった血管は元には戻りにくく、細胞に新鮮な酸素と栄養素が充分には送られなくなります。
糖尿病の三大合併症である網膜症、腎症、神経障害は、細小血管が密集している器官で起こりますが、これらの弱い血管は高血糖の影響を受けやすく、障害も出やすくなっています。
これまで、糖尿病と合併症の関係は、高血糖が主な原因だと考えられてきましたが、それだけが細小血管の障害の原因ではありません。
糖尿病になると、血液中のブドウ糖が過剰になり、血液中のタンパク質である赤血球と結びつくようになります。赤血球の中には鉄を含む色素とタンパク質が結合したヘモグロビンが存在していますが、このヘモグロビンにブドウ糖が結びついたものがヘモグロビンA1cで、この値は長期間(2〜3か月)の血糖コントロールの指標となっています。
ヘモグロビンA1c値が高いのは、血糖値が長期間にわたって高めの状態であったということを示すだけでなく、血液中のタンパク質とブドウ糖が結びついた糖化タンパクが多くなっている証拠でもあります。血液中で糖化タンパクが合成されるときにはエネルギー代謝の産生物として活性酸素が発生します。ヘモグロビンA1c値が低めであっても、糖尿病であれば糖化タンパクが増えていることには違いがありません。つまり、糖尿病では体内で活性酸素が多く発生し、ヘモグロビンA1c値が高いほど活性酸素の量が増えていることになります。
血糖値を低下させるホルモンのインスリンは膵臓から分泌されていますが、膵臓は活性酸素に侵されやすい器官であるため、高血糖の影響を受けて機能が低下していきます。膵臓の機能が低下すると、インスリンの分泌量が減るために、ますます血糖値が上昇しやすくなり、活性酸素の発生量が増えるというように悪循環になっていきます。
糖尿病患者の尿を検査すると、一般の人よりも抗酸化成分のビタミンやミネラルなどの量が少なくなっています。これは体内で多く発生した活性酸素を消去するために、抗酸化成分が使われて減少した結果といえます。