脳の健康寿命91 糖尿病の合併症1

糖尿病は認知症のリスクを高めますが、それは細くてもろい細小血管の老化と関係しています。
「糖尿病で死ぬことはない」とは、検査を受けて高血糖を指摘された人が、よく口にする言葉です。こういった感覚が、糖尿病の受診を遅らせる原因となっています。
糖尿病になったからといって、それだけで亡くなることはないものの、年間の死亡原因を見ると、糖尿病は第10位前後であり、年間に1万4000人以上が亡くなっています。その多くは合併症によるものです。糖尿病の合併症で亡くなる人の多くは腎症によるもので、これは細くて弱い細小血管がもろくなることによって起こります。高血糖状態が5~10年も続くと、細小血管が高濃度のブドウ糖にさらされ、血管細胞内にブドウ糖が多く入り込み、新陳代謝が弱まっていきます。これによって血管の弾力性が失われていくようになり、血流が大きく低下するようになります。
これは古くなったゴム管がボロボロになっていくのと似た状態であり、ボロボロになったゴム管が元には戻らないのと同じように、血管も高血糖にさらされ続けると、元には戻りにくくなります。糖尿病の合併症としては、腎症、網膜症、神経障害があげられ、これが三大合併症と呼ばれています。
◎腎症
慢性腎不全によって人工透析を始める人は年間30万人を超えていますが、そのうち約44%は糖尿病性腎症が原因で、もともと腎臓に原因があった人の割合を上回っています。糖尿病性腎症で人工透析を始めた人の寿命は、それ以外の腎機能障害が進行して人工透析を始めた人よりも、年齢によって違いはあるものの5年ほども短くなっています。一般の腎臓病は血液を濾過する糸球体が徐々に侵されていくのに対して糖尿病性腎症は細小血管だけでなく、糸球体も全体的に侵されるために合併症の進行が早くなります。