糖尿病は認知症のリスクを高めますが、それには免疫の低下も影響を与えています。
免疫は、免疫細胞の白血球とリンパ球によって行われていて、身体を構成する成分と異なるものや有害なものを外敵とした攻撃して排除する仕組みです。糖尿病によって免疫が低下するのは血流の低下が一つの原因です。
高血糖状態では赤血球の色素であるヘモグロビンとブドウ糖が多く結びついていきますが、このときに活性酸素が多く発生することが確認されています。活性酸素は血管壁を傷つけるとともに、血液中のLDL(低比重リポ蛋白)を酸化させて動脈硬化を進めていく要因となります。LDLは全身にコレステロールを運ぶ役割をしています。
コレステロールは全身の細胞膜の材料で、ホルモンや胆汁酸の原料となっています。これを運ぶためのLDLは身体に必要なものであることから、白血球が外敵として攻撃することはありません。しかし、活性酸素によって酸化すると性質が変わり、これを白血球が外敵と認識して攻撃を始めます。特に大きいのが白血球の働きで、酸化したLDLを内部に取り込んで処理していきます。限界まで取り入れると白血球は活動を止めて、血管の内部に入り込みます。これが続くと、血管が硬くなり、狭くなっていく動脈硬化のきっかけとなります。
糖尿病になると血液中のブドウ糖濃度が高くなり、赤血球がブドウ糖によってベタついたり、赤血球同士がくっついた状態になって血流が悪くなります。そのために血液中の免疫細胞(白血球、リンパ球)の流れも悪くなり、免疫力が低下していくことになります。これも影響して糖尿病患者の10人に1人ほどが感染症で亡くなっています。
日本人の平均寿命は女性が約87歳、男性が約81歳となっていますが、糖尿病患者の平均寿命は男女ともに10~12歳も短くなっています。それだけ糖尿病は血管を傷つけ、全身に影響が出やすい病気だということがわかります。