腕を横に振って歩く原因

歩くときには腕を前後に大きく振って、というのは西洋式の歩行法で、日本人には合っていない歩行法だと考える人もいます。長い江戸時代が終わり、明治時代になって持ち込まれた軍隊式の歩き方である、とうようなことを言う人もいます。私たちは日本人の体質を研究していて、体質に合った生活法による健康づくりを提案しています。それもあって、日本人に適した歩き方について聞かれることもあります。
以前の日本人は腕を大きく前後に振ることはなく、右足を踏み出すときには右手を前に出し、左足を踏み出すときには左手を前に出す歩き方をしていたことも記録に残っています。しかし、それでは走りにくく、早歩きもしにくいので、軍隊式と言われても右足を出すときには左手を前に、右足を後ろに振る、逆も同じようにするという歩き方が今の時代には合っています。
ウォーキングというと、肘を曲げて、前に、というよりも少し上に振る感じで歩いている人がいます。テレビで見かけるウォーキングのシーンでも、そんな歩き方をしていることから、腕は肘を曲げて前に振ったほうがよいと思っている人もいます。しかし、それでは歩幅が小さくなり、元気に見えたとしても勢いよく前進することはできなくなります。腕の振りは振り子と同じように振り幅が大きいほど前進のための運動エネルギーが大きくなります。肘を伸ばして歩くのが正しい歩き方といえます。
肘を曲げようが伸ばそうが、腕は前後に振るのが基本中の基本です。ところが、腕を左右に振って歩いている人をよく見かけます。横に振ると運動エネルギーが横に流れて、早く歩けなくなります。ゆっくりと歩いている人に多くなっていますが、なぜ横に振るのかというと上半身が前かがみになっていることが大きな原因です。
背筋を伸ばして胸を張り、モデルのように頭が上から吊られている感じの姿勢で歩くと腕を横に振ることができなくなります。勢いよく歩くと前傾姿勢になっていきますが、そのときにも腕は前後に振られます。ところが、前傾であっても猫背になると首が前に出て、肩の位置が下がります。こうなると腕を前後に振ろうとしても横に振れるようになってしまいます。そして、腕につられて上半身が少しであっても左右に振られることから前進のエネルギーが失われてしまいます。
そのようなことにならないために、前後に振るように意識をしても、長年の癖のようなものなので、ついつい横に振るようになり、そのために猫背になっていくこともあります。肘を曲げて前に腕を振って歩いている人の中には、左右に振れるのを防ぐためだという人も少なからずいますが、背筋を伸ばした歩き方をすれば腕を大きく前後に振るのが普通の動きになっていきます。
これを矯正するためというと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ポールを用いたノルディックスタイルのウォーキングをすると、左右に腕をすることができなくなり、前後への腕振りが習慣になっていきます。ノルディックスタイルのウォーキングは背筋を伸ばして歩けるので、それによっても左右への動きが自然に矯正されていきます。