腸を動かすことを意識して歩く必要があるのか

腰を大きく左右に振りながらウォーキングをしている人を見かけました。65歳前後と見える男女2人組でした。どうして、そんな歩き方をしているのかと聞いて見たら、「腰を動かして歩くと腸の調子がよくなるから」との返事。ここのところウォーキングと腸の状態に関する健康雑誌の記事を見かけていたので、それを実践している人たちだったわけですが、私たちの理解とは少し違っていました。
歩くと腰が動いて腸が揺り動かされるので便通がよくなるということは、定説のように語られています。歩く機会を増やすことによって腸の調子がよくなって便通が改善されることは確かです。また、歩くと腸が動いて腸内細菌の善玉菌が増えると説明するウォーキングのテキストの記載を見たこともありますが、無理に左右に腰を大きく振って歩かなくても、そんな歩きにくい方法をしなくても、歩幅を広げて、勢いよく歩けば嫌でも腰の振れは大きくなります。
歩幅が広げられない、勢いよく歩けないという人のためには、ポールを持って歩くノルディックスタイルのウォーキングを紹介しています。ポールの支えがあるので、歩行姿勢がきれいになり、歩幅が自然と広がります。ポールを持って歩くことによって身体が左右に振れずに前進のために運動エネルギーを使う歩き方をすすめています。
歩くことによって腸の調子がよくなるのは、腸の温度が高まるからです。腸内細菌の悪玉菌と善玉菌は活躍する温度帯が異なっていて、悪玉菌は腸の温度が高くても低くても活動が盛んになり、増殖していきます。それに対して、善玉菌は腸内の温度が高めの状態で活動が盛んになります。腸は身体の中にある器官ですが、毛細血管が集まっていて、条件としては皮膚と同じ末端となります。血流がよくないと皮膚の温度が下がるのと同様に、腸の温度も下がっていきます。
腸内細菌の働きをよくするためには善玉菌と同様の働きをするプロバイオティクス(乳酸菌など)とプレバイオティクス(善玉菌のエサ)を摂ることが必要になりますが、それとともに腸内の温度を高めるために身体を動かすことが重要になります。ということで、有酸素運動のウォーキングは善玉菌の働きをよくして便通をよくすることにつながるというわけです。
もう一つ重要なこととしてすすめているのは、何度も登場している三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。これらの成分は体内で合成されるもので、α‐リポ酸は糖質を細胞のミトコンドリアに取り込むために必要で、L‐カルニチンは脂質を取り込むために必要になります。そして、コエンザイムQ10はミトコンドリア内で糖質と脂質を燃焼させてエネルギーを作り出すときの補酵素となるので、三大ヒトケミカルが充分にあることでエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)の産生量を増やすことができます。
体内で発生したATPのうち半分ほどは熱エネルギーとして使われています。身体を動かしてATPを増やそうとしても、三大ヒトケミカルは20歳代をピークに合成量は減っていきます。年齢を重ねると運動をしてもATPが産生されにくくなるので、三大ヒトケミカルを補う必要が出てきます。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は医薬品だけでなく、食品として使うことも許可されているのでサプリメントとして摂ることができます。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。