人間は亡くなると、そのまま放置すると腐ってしまいます。生きている人間が腐ることがないのは、生きている間は免疫によって、細胞が病原菌などによって破壊されないように守られているからです。怪我が治るのも、がんやウイルスなどによって身体が侵されないようにしているのも、すべて免疫が働いている結果です。
免疫は「病気と戦う力」であると一般には理解されていますが、正確には「身体にとって必要なものと不必要な有害なものとを判別して、有害なものだけを攻撃する力」を指しています。
体内にあるもの、成長や健康維持に必要なものは“健康の味方”となるもので、これを通常は体内では攻撃したり、破壊することはありません。身体にとって不要なもの、害となるものを選別して、それだけを攻撃して処理するのが免疫の仕組みとなっています。戦闘にたとえると、レーダーによって敵と味方を判別して、敵だけを攻撃するための仕組みで、敵の種類がわかれば、それに最適に軍備が出撃するということと同じ感覚で捉えられます。
日本人は終戦後にして食生活が大きく変化して、平均寿命を世界のトップに押し上げることができました。その一方で、洋風化が進んだ食生活によって生活習慣病が増える結果となったわけですが、それに加えて平均寿命に免疫の変化が大きな影響を与えました。終戦直後の死亡原因の第1位は結核でしたが、その当時の日本人は低栄養のために体格・体力ともに劣っており、脂肪摂取が足りないことによるエネルギー不足もあって免疫力が低くなっていました。しかし、食生活が変わるにつれて結核で亡くなる人は大きく減っていきました。
日本は衛生的な国であり、島国であることから他国に比べて感染症も少なく、それに免疫の向上もあって、寿命を一気に延ばすこととなったのですが、その一方で、日本人の免疫の低下も叫ばれるようになっています。日本は衛生的な上に、清潔にしすぎることから、日常的に感染症を引き起こす細菌やウイルスなどに触れる機会が少なく、自然と身につく抵抗力が弱くなっています。そのために海外に行って衛生状態が変わると耐え切れずに下痢になったり、感染症にかかりやすいことが指摘されているのです。