腸内細菌の善玉菌と悪玉菌は違うものなのか

前回の発酵と腐敗の話を受けて、テレビ局のディレクターから問い合わせがありました。「発酵と腐敗が同じメカニズムであるなら、腸内細菌の善玉菌と悪玉菌も同じことをしているのか」という内容でしたが、同じといえば同じ、違うといえば違うことをしています。善玉菌の働きは簡単に発酵だと言われています。エサになる食品を食べて、代謝物を外に出していますが、人間の身体に有益な代謝物を出しているものが善玉菌と呼ばれています。これは発酵食品と同じで、身体によい菌を増やすこともしています。
悪玉菌は代謝までは同じでも、有害な代謝物を出しています。善玉菌は乳酸菌などで、発酵すると乳酸などの酸性成分が作られて、腸内を酸性傾向にします。善玉菌は酸性の環境で増殖していくので、善玉菌が増えると、ますます増えやすくなるということです。そして、アルカリ性傾向で増える悪玉菌の活動が抑えられ、数も減っていくようになります。
発酵食品の味噌、醤油、納豆は大豆が原材料となっているので、植物性たんぱく質が発酵を進めるという印象があります。それは間違っていなくて、善玉菌が好んでエサにしているのは植物性たんぱく質や糖質です。それに対して悪玉菌のエサは動物性たんぱく質と脂肪です。
ここまでの話をしたら、「乳製品は動物性たんぱく質なのに腐敗しなくて発酵している」と疑問をぶつけてきましたが、乳製品には乳糖という糖分が含まれていて、善玉菌が発酵させること、つまりに乳成分を分解することで乳糖を作り出しているのです。
善玉菌を増やすには植物性たんぱく質と糖質を摂ればよいということですが、これらの食品を増やし、動物性たんぱく質と脂肪を減らしても、なかなか善玉菌が増えないという人は少なくありません。食品を腐敗もしくは発酵させる菌は低い温度では増えず、高い温度で増えるということは共通しています。それに対して腸内細菌は腸内の温度で活躍の度合いが違ってきます。腸内の温度と言っても大きな差はなくて35〜37℃くらいの範囲です。それでも菌にとっては大きな差で、悪玉菌は温度が低めでも高めでも関係なく増殖していきます。一方の善玉菌は高めの温度で増殖していきます。
ということがわかると、腸内の温度を高めることが善玉菌を増やし、増えた善玉菌によって悪玉菌を抑えることができるということがわかってきます。とはいっても、外から熱を与えても腸内までは温まりにくくなっています。そこで考えたいのが血流を盛んにして、温かい血液を早く送って、中から温めていく方法です。
そのためには身体を動かして、糖質と脂質の代謝を高め、作り出されたエネルギーによって身体を温めることです。細胞の中で発生したエネルギーのうち70%ほどは体熱の維持に使われています。代謝を高めるためには食事でエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を摂り、これが細胞のミトコンドリアで充分な代謝を起こすために必要となるビタミンB群のビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10を欠かさないようにすることです。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。